熱と電気を有効活用する仕組みが家庭で拡大、2015年度は13.3%増加:電力供給サービス
日本ガス協会は、全国206事業者を対象とした調査結果をもとに、2015年度の都市ガスのコージェネレーション導入実績をまとめた。
コージェネレーションシステム(以下コージェネレーション)は、電力と熱を同時に生産し供給するシステムであり、効率性のよい分散型エネルギーシステムを支える技術として注目を集めている。ガスエンジンやガスタービン、燃料電池などが存在するが、その燃料として活用が進んでいるのが都市ガスである。
日本ガス協会が発表した2015年度(2016年3月末)の都市ガスコージェネレーション(スチームタービン除く)の導入実績は、累計設置容量が514.7万kW(キロワット)となり、2014年度に比べて10.1万kW(2014年度末比2.0%)の増加となった(図1)。
図1 都市ガスコージェネレーションの累計設置容量 出典:日本ガス協会
一方で、累計設置件数は26万579件となり、2014年度末に比べて12.9%の増加となった。このうち、業務用と産業用の合計件数は7366件で、2014年度末に比べて2.4%増にとどまったが、家庭用燃料電池(エネファーム)を含む家庭用の件数は、2014年度比13.3%増の25万3213件となり、導入件数全体を大きくけん引した(図2)。
図2 都市ガスコージェネレーションの累計設置容量と累計設置件数の用途別内訳 出典:日本ガス協会
コージェネ財団によると、家庭用燃料電池であるエネファームの販売台数は2014年度が3万8018台でったが、2015年度は4万447台と4万台を突破。順調に販売を伸ばしており、家庭用のコージェネレーションシステム拡大に貢献している(図3)。
図3 エネファームの販売台数推移(2016年6月末時点) 出典:コージェネ財団
- 電力と熱の両方を供給できる「コージェネ」
国や自治体が補助金制度を設けて「コージェネレーションシステム」の普及に力を入れている。略称「コージェネ」は電力と熱を同時に作り出せる設備で、燃料を2倍の効率で使える点がメリットだ。熱は給湯と冷暖房に利用できる。企業や家庭の自家発電設備として利用価値が高まってきた。
- コージェネで2030年に電力の15%を、災害に強い分散型のメリット
政府が2030年のエネルギーミックスを検討する中で、電力と熱を同時に供給できるコージェネレーションを拡大する議論が始まった。2030年には国内の総発電量のうち15%をコージェネレーションで供給できる試算も出てきた。火力や原子力と違って分散型の電源を拡大するメリットは大きい。
- 似て非なる電力とガスの小売自由化、市場開放の共通点と相違点
電力に続くガスの小売全面自由化が2017年4月に始まる。全国に3000万の需要家を抱える都市ガスの市場開放に向けて電力会社の動きも活発になってきた。政府は電力と同様に料金規制の撤廃や託送供給の拡大を推進するが、都市ガスならではの同時同量制度や導管の運用ルールに課題が残る。
- ガス小売事業者の登録申請が始まる、関西電力が早くも名乗り
電力に続いて都市ガスの小売全面自由化が目前に迫ってきた。政府は自由化に先立って8月1日からガス小売事業者の登録申請を受付開始した。いち早く申請を出したのは関西電力で、電力と都市ガスのセット販売に備える。一方で都市ガスの大手5社は自由化後に適用する託送料金の認可を申請した。
- 電力に代わるガスの台頭、いよいよ価格競争が始まる
企業や家庭のエネルギー源として電力に押され気味だったガスが存在感を高めている。万一の災害時に電力が途絶える心配もあり、代替エネルギーとしてガスを使える発電設備や冷暖房設備が全国で広がってきた。ガス料金は長期的に低下する見通しで、電力会社との競争が激しくなる。
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