守から攻へ、東電がスマートホーム用IoTサービスでソニーと提携電力供給サービス(2/2 ページ)

» 2016年08月24日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]
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ソニーの抱える危機感

 ソニーモバイルコミュニケーションズは、主力としてきたスマートフォン「Xperia」シリーズが、2014年度(2015年3月期)以降、不振に陥り、構造改革を進めている状況だ。2016年度第1四半期には黒字化するなど好転の兆しは見せつつあるものの、スマートフォン市場そのものが好転する兆しはないため、新たな成長エンジンが必要となっている。

 この中でソニーモバイルコミュニケーションズが注力するのがIoT分野での新規事業創出である。ソニーでは、顧客と継続的に関係を持ち課金を可能とするリカーリング型ビジネスの創出を全社方針としている。その中で、モノ売りではなく、モノを通じたサービスを提供するビジネスモデルを模索しているが、家庭向けのIoTサービスもその1つということがいえる。

東電の抱える危機感

 一方、東京電力エナジーパートナーにとっては、自社の主戦場である関東圏が電力小売り全面自由化により、新規参入企業から攻め立てられる立場にあることが理由としてある。既に2016年7月末時点で東京電力管内では87万件がスイッチングしており、これは人口や世帯数を考えれば当然だが、他地域に比べて圧倒的に多い数字である。

 電力自由化で最大のライバルともいえる東京ガスが、2016年7月30日時点で年度目標だった40万件の契約数を突破しており、他地域への販売などの成果もそれほど大きく伸ばせず、守り一辺倒の状況だといえる(図2)。

photo 図2 スイッチング支援システムの利用状況(2016年7月末時点) 出典:電力広域的運営推進機関

 2017年4月にはガス小売全面自由化を控えており、ガスで契約数を伸ばせる可能性もあるが電力ほどスイッチングが容易ではなく、こちらも大きく伸ばすことは難しい。こうした状況を考えれば、東京電力エナジーパートナーにとっては、主力の電力小売り事業で現状のままでは、売り上げ規模を維持することは難しく、新規事業に取り組んでいく必要があるということになる。

 契約数を伸ばすことが難しいのであれば、契約世帯当たりの売り上げを増やすしかない。その中核として狙っているのがスマートホームにおけるIoTサービスである。

提携の利点とは?

 東京電力エナジーパートナーには具体的には家庭内のサービスを実現するようなIoTデバイスを開発する能力がない。一方でソニーモバイルコミュニケーションズは従来は通信キャリアに端末を販売するビジネスモデルあるため、サービス基盤を持たない。この両者の関係を補完するのが今回の提携である。

 東京電力エナジーパートナーには、2000万以上の顧客および世帯と直接つながるルートを持つ強みがある。電力販売を通じた口座や支払いの仕組みなども持ち、新たなサービスをこの基盤の乗せることで売り上げ成長ができる可能性がある。今後は両社で家庭内のサービスビジネスモデルを企画。端末の開発をソニーモバイルコミュニケーションズが担い、東京電力エナジーパートナーのサービス基盤に乗せることで、新たなサービスモデルを家庭に届ける仕組みになるだろう。

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