「エコめがね」の先に見据えるIoT時代、NTTスマイルが事業戦略を語る太陽光(2/2 ページ)

» 2016年11月17日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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今後の注力領域は3つ

 谷口氏はNTTスマイルエナジーの今後の注力事業として3つの領域を挙げた。1つ目がO&Mサービスの拡充だ。エコめがねは販売店が太陽光発電設備のオーナーに販売する形式をとる。そのため、発電設備や遠隔監視やオーナーに提供するレポートの作成といったO&Mサービスの実務は、基本的に販売店が行うことになる。しかし複数のオーナーを抱える場合、販売店の業務負荷は大きい。そこで2016年11月1日から提供を開始した販売店向けの新サービスが「エコめがね見守りアラカルト」だ。これはエコめがねを導入している発電設備のO&Mにかかわる業務を、販売店の代わりにNTTスマイルエナジーが代行するサービス。代行する業務は、販売店が複数の選択肢から自由に選べる(アラカルト)という仕組みだ(図3)。

図3 「エコめがね見守りアラカルト」のイメージ(クリックで拡大) 出典:NTTスマイルエナジー

 現時点で選択できるのは主に「遠隔監視の代行」「発電レポートの発行」「エコめがねのサービスを施主に提供する権利の提供」の3種類。同社では選べるサービスの種類を今後さらに増やしていく計画だ。谷口氏は「O&Mの重要性が認識されはじめ、ニーズは高まってきた。一方、その業務すべてを販売店だけで行うのは難しいといった声もある。今後は異常時の駆けつけ、料金回収の代行の他、エコめがね用に利用している通信回線をシェアし、監視カメラを接続するサービスなども提供していきたい」と語った。

 2つ目の注力事業が家庭向けのPPA(Power Purchase Agreement)サービスだ。PPAとは顧客の敷地や住宅屋根に、発電事業者が太陽光発電設備を設置し、そこで発電した電力を顧客に販売するモデルのこと。設備の設置費用と所有権は発電事業者が持つため、第三者所有モデルとも呼ばれる。顧客側には大きな投資をせずに再生可能エネルギーで発電した電力を利用できるメリットがある。

 こうした第三者所有モデルは、米国などで施工して広がっているが、日本では2016年3月か日本エコシステムが「じぶん電力」というサービス名で、国内で初めて提供を開始した。このじぶん電力の遠隔監視システムにはエコめがねが採用されている。

 第三者所有モデルの場合、事業者側は設備費用を負担するため外部資金を活用する場合も多い。谷口氏は「日本でもやっとこうしたサービスが登場し、投資家などからの理解も深まってきたように感じる」と述べる一方、NTTスマイルエナジー自身が設備費用を負担する形でこうした新事業を立ち上げるかどうかについては「現時点ではどちらともいえないが、われわれの強みを生かすのであれば、パートナー企業と組むかたちが一番良いのではないかと考えている」とした。

 谷口氏が3つ目に挙げたのが、同社が参画する経済産業省のVPP構築実証事業だ。現在、関西電力をはじめとする13社と共同で、2017年2月末までをめどに関西電力管内の電力系統に点在するさまざまな需要家の機器をIoTで統合制御し、仮想発電所(VPP)を構築する実証事業を進めている。VPPは地域全体を1つの発電所のように機能させることで、電力需要の抑制、さらには再生可能エネルギーの導入拡大も期待できる。

 同社ではエコめがねを中心とする遠隔監視サービスの顧客基盤を活用しつつ、こうしたVPPの構築など将来のより高度な「エネルギーのIoT時代」を見据えたサービス開発・展開に注力する方針。谷口氏は「こうした事業によって、再生可能エネルギーのさらなる普及、さらには『パリ協定』への貢献を目指したい」と語った。

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