船で使える「バイナリー発電機」を実用化、海運業の省エネに省エネ機器

未利用熱を活用して発電できるバイナリー発電機。神戸製鋼など3社は船舶エンジンに適用できるバイナリー発電システムの実用化にめどをつけた。エンジンの過給器の排熱を活用して発電し、船舶の補助電源などに利用して省エネを図れる。2019年度から本格的に販売を開始する。

» 2017年03月30日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 さまざまな熱源を利用して沸点が低い媒体を加熱し、得られた蒸気でタービンを回して発電する「バイナリー発電」。70度程度と比較的低温の熱源でも発電が行えるため、温泉や工場の排熱を利用した発電に活用されている。

 こうしたバイナリー発電機の製造を手掛けている神戸製鋼は、新たに船舶用バイナリー発電システムを開発し、実用化のめどをつけた。旭海運、三浦工業と2014年4月から共同開発を進めてきたもので、2016年12月に実船搭載での海上試験に合格し、日本海事協会の認証を取得した。2019年度から神戸製鋼を窓口として販売を開始する計画だ。

開発した「船舶用バイナリー発電システム」(クリックで拡大) 出典:神戸製鋼

 開発したシステムは、船舶用エンジンに付属する「過給機(ターボチャージャー)」からの排熱の有効利用を目指したものだ。これまでそのまま捨てられていた排熱を活用して発電し、船舶の補助電源などに活用する。船舶用エンジンの過給器を利用したバイナリー発電システムは世界初だという。

 旭海運が所有するバルク船「旭丸」を利用して実施した海上試験では、エンジン出力7500kW(キロワット)時に、125kWを発電することを確認できた。これは、船舶の発電機における使用燃料の約20〜25%に相当し、船舶の排熱を利用した発電量としては最大規模になるという。

大型石炭専用船「旭丸」 出典:神戸製鋼

 船舶の出力は運行パターンによって変動する。そこで、開発したシステムは低負荷から高負荷まで幅広いレンジで発電できる仕様とした。さらに既存船への導入も考慮し、システムの各部品は船体構造を切断することなく、パーツハッチから搬入可能できるようにしている。

 船舶を運行する場合、変動費の大半は燃料費が占める。エネルギー効率を改善し、そのコストを数%でも改良することができれば、事業者側へのメリットは大きい。神戸製鋼は2019年度からの販売に先行して、2017年4月から既存顧客への案内を開始するとしている。

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