経産省が語る「スマート保安」の重要性、“稼ぐ力”の後押しにもIT活用(2/2 ページ)

» 2017年08月17日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]
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中部電力の「火力×IoT」事例を紹介

市場氏

 セミナーでは具体的な成功事例として、中部電力 火力発電事業部技術グループ課長の市場元浩氏が「電力業界におけるIoT技術活用のメリット及び成功要因」をテーマに、火力安全設備における異常予兆の早期発見を目指す取り組みを発表した。

 中部電力は熱効率の向上、修繕費の削減、新技術の積極的な導入により、競争が激化する火力発電事業の領域でナンバーワンを目指す取り組みを強化している。その中で、総出力410万kW(キロワット)という石炭火力発電所の規模としては国内トップクラスの「碧南火力発電所」(愛知県碧南市)に火力最適運転支援システムを導入した。

 同システムのコアエンジンとなるのは、ビッグデータ分析技術だ。プラントから得られるさまざまなデータを分析し、状態の変化や異常などの予兆を捉え、早期対処による最適運転(高効率、高稼働)の維持および故障の未然防止を図ることを目指している。同システムの導入メリットは、火力発電設備の故障の早期発見、運転保安の高度化、高稼働運転の維持などがある。市場氏は「この仕組みは他社も導入可能だと考え、自社だけでなく、国内外の火力発電事業者などに予兆監視とO&Mソリューションとして提供していく」と述べた。

 さらに、ABS樹脂、合成ゴムラテックスなどを製造する日本エイアンドエル 取締役 愛媛工場長の池田高宏氏が、一般化学業界におけるIoT技術活用のメリット及び成功要因の事例として「アラームマネジメントの導入の実践」をテーマに、導入の背景や保安力向上の取り組みとそのメリット、成功要因などを紹介した。その中で導入のメリットとして「保安面では熟練人材のノウハウをもとに、アラーム作動時の機器の対応操作手順を標準化することで、若手人材が熟練のノウハウを活用できるようになるなど、大きな成果があった。収益面でも品質、生産性の向上が図れた」(池田氏)とした。

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