人工島に水素を使う熱電供給システム、神戸市で世界初の実証へ:電力供給サービス(2/2 ページ)
神戸市は、2030年度に向けて水素エネルギーと再生可能エネルギーを拡大する「環境貢献都市KOBE」を推進している。市内で消費する電力のうち30%を分散型のエネルギーで供給することが目標で、そのうち半分の15%を太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギー、残りの15%を水素などを利用した熱電併給(コージェネレーション)システムなどでカバーする計画である。
水素の利用拡大に向けては、今回実施する水素コージェネレーションシステムの実証に加え、もう1つ大型の実証事業が進行している。川崎重工業、岩谷産業、電源開発、シェルジャパンがNEDO事業として進める、水素サプライチェーンの構築を目的とした実証事業で、オーストラリアなどの海外から、安価な褐炭(かったん)で製造した水素を船で輸送し、神戸市で受け入れられるようにするというプロジェクトだ。
神戸市の沖合にある空港島の一角に、海外から運搬船で運んだ液化水素の積み下ろしを行う荷役装置や、配管や貯蔵タンクを設け、水素の受け入れと、国内各地に水素を供給できる体制を構築する。2019年度に試運転を開始し、2020年度から実証運転へ移行する予定となっている。
「水素サプライチェーン構築実証事業」を実施する神戸空港島(右下の平面図の赤い丸が実証地区) 出典:神戸市みらい総局、神戸市環境局
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