ビール工場の排水で発電、アサヒと九大がバイオガスの精製に成功自然エネルギー

アサヒグループHDと九州大学が、ビール工場の廃水から燃料電池での発電に適したバイオガスを精製するプロセスの開発に成功。このバイオガスを活用し、2000時間超えの連続発電に成功した。

» 2018年05月17日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 アサヒグループホールディングス(アサヒグループHD)は、九州大学次世代燃料電池産学連携研究センター(NEXT-FC)との共同研究で、ビール工場の排水処理工程から得たバイオメタンガス(バイオガス)を、固体酸化物形燃料電池(SOFC)発電に適した高純度なバイオガスに精製するプロセスを確立したと発表した。同プロセスにより精製したバイオガスを用いて試験用SOFC発電装置による発電試験を行った結果、2000時間超えの連続発電に成功した。

 今回、新たに開発したバイオガス精製プロセスは、高純度な精製を実現するとともに、低コストでの導入が可能な設計となっているという。今後、事業実装プロセスとして確立できれば、ビール工場に限らず幅広い食品工場のほか、嫌気性排水処理設備を導入している多くの工場・施設でも排水由来のバイオガスを用いたSOFCの活用が可能となり、CO2排出量削減に貢献できるという。

ビール工場排水を利用した燃料電池による発電モデル 出典:九州大学

 アサヒグループでは、国内ビール工場8拠点、国内飲料工場5拠点で、嫌気性排水処理設備を導入している。同設備は、製造工程で出る排水をメタン発酵法により処理し、そこで得られたバイオガスをボイラーなどで燃焼することで熱エネルギーとして再び利用している。

 一方、SOFCはエネルギー変換効率が高い発電手段として知られているが、現在稼働しているSOFCの大半は、化石燃料由来の水素または都市ガスを利用しているため、CO2排出量削減への効果は限定的な状況となっていた。

 そこでアサヒグループHDでは、工場排水処理より得られるバイオガスを用いてSOFC発電を行い、効率よく電力を生成することで、さらなるCO2削減を目指すための研究をスタートした。

 排水から得たバイオガスを利用してSOFCを発電させる際に、最も大きな課題となるのは、ガス中に含まれる不純物の存在だという。これらの物質がSOFCによる発電を阻害するため、安定的な発電を得るためには不純物を取り除く必要がある。また、社会実装を加速的に進めるためには、導入コストを抑えることが不可欠となっている。

 そこでアサヒグループHDでは、ビール工場の嫌気性排水処理設備から得られたバイオガスに含まれる不純物を除去するための精製プロセスを新たに構築し、高純度かつ低コストで導入可能なシステムを開発したもの。

 2000時間以上の連続発電において、今回精製したバイオガスが発電を阻害する事象は確認していないという。今後は、精製バイオガスによる季節変動などの影響を評価するため、最長1万時間の長期連続発電を目指す方針だ。

試験用発電装置と不純物除去装置の概要 出典:九州大学

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