国内エネマネ市場は800億円規模へ、“卒FIT”太陽光が追い風に省エネ機器(2/2 ページ)

» 2018年09月21日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]
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住宅太陽光の「2019年問題」がHEMSを後押しか

 今回の調査では注目市場としてHEMS、省エネサービス、エネルギー設備リースサービス(分散型電源など)を上げている。

 このうちHEMS(Home Energy Management System)の市場は、2017年度まで微増推移であったが、2018年度は住設建材メーカー系が新たに投入した住設建材や家電と接続可能なIoTやAI搭載のシステムがハウスメーカーやビルダーからの受注を伸ばしており、前年度比7.5%増の72億円が見込まれる。2019年度以降はFIT終了により、太陽光発電システムは自家消費用途として活用または導入されることになり、蓄電システムとHEMSの追加採用が増えるとみられる。また、国が推進するZEH要件にHEMSが含まれているため、2030年度(同年度予測150億円)までは一定の割合で増加していくと予想される。

 ビルの設備に関する情報を収集して中央監視・制御するBAS(Building Automation System)は、主に大規模ビルで採用される。市場は近年首都圏を中心とした大規模再開発案件が活況であることに加えて、バブル期に導入されたシステムのリプレースが堅調である。2017年度の市場は首都圏の大規模再開発案件がけん引し拡大した。2020年度以降市場は微減となるが、首都圏の大規模再開発計画や地方中核都市の再開発計画、リプレース案件や、ビル管理者などの不足から中規模ビルでのニーズも予想され、一定規模は維持するとみられる。2030年度の予測は450億円(2017年度比92.6%)。

 ビルのエネルギー管理に特化したBEMS(Building Energy Management System)単独システムは、主に中小規模ビルで採用される。東日本大震災に端を発した電力コスト削減機運の高まりによる需要は一巡している。加えて、電力供給の安定化や、電力小売事業者による高圧電力供給サービスの値下げ競争などにより、エネルギー管理やデマンド監視による省エネ・電力コスト削減ニーズが年々低下しており、近年はリプレースが中心で、市場は縮小している。ビル管理者などの不足から、中小規模ビルにおいてもBEMSによるエネルギー管理や設備管理の省人化・省力化ニーズが高まると予想される。また、VPP/DRが実運用に向かうことで、新電力やリソースアグリゲーターによるBEMS導入提案が加速し、市場は2020年度以降拡大に転じると予想される。20130年度の市場予測は180億円(同187.5%)。

 省エネサービスはEMSやエネルギー設備などの見える化や監視、制御、エネルギーデータの分析による省エネ診断や運用コンサルティングを行うサービスを対象としている。市場規模はサービス利用のランニングコストとなっている。

 家庭向けはHEMSとセットでHEMS関連事業者が、また、太陽光発電システムの遠隔モニタリングサービス事業者や創エネ設備・蓄エネ設備のリース事業者などがサービスを提供することが多く、市場はHEMSや太陽光発電システム、蓄電システムなどの動向に影響を受ける。ただし、HEMSに関しては、多くの場合が導入時のイニシャルコストのみで、サービス料を別途設定する事業者は限定される。

 2019年度にFITが終了するため、太陽光発電電力の自家消費が進むとみられ、蓄電システムやHEMSの導入が増加すると予想される。また、拡大する電力小売サービス事業者や自家消費ユーザーに対して、今後新たなサービスを拡充する事業者や、新規参入も増えるとみられ、市場拡大が期待される。2030年度の予測額は26億円(同2倍)とする。

 業務・産業向けは東日本大震災による電力供給ひっ迫などの影響による電気料金の値上げにより、需要家における電力コスト削減機運が高まり導入が進んだものの、それが一巡したことや高圧電力小売サービス事業者の価格競争で電力コストの負担が減ったことなどで、新規導入の機運が低下、伸び悩んでおり、サービス解約も増加えている。

 参入各社は電力供給契約の見直しや高効率設備への更新など、より効果的な電力コスト削減提案や、エネルギー 使用状況の分析による労働環境・効率改善提案など、サービスの付加価値化を進めている。今後は電力小売サービスとの組み合わせや設備更新提案、負荷設備の予兆監視・予防保全といった付加価値が必須になると予想される。

 また、VPP/DRの実運用開始が2020年度以降に想定されており、このサービスにより創出されたネガワットを取引することによってインセンティブが得られることから、これまで以上に導入が進むと予想される。2030年度は150億円(同178.6%)を予測する。

 エネルギー設備リースサービスは受変電設備、コージェネ設備、ボイラー、空調熱源設備(チラーなど)、コンプレッサー、LED照明、屋根設置型太陽光発電システム、蓄電システム、EMSなど、エネルギー設備/分散型電源(地上設置型太陽光発電や風力発電などの大規模分散型発電は含まない)のリースサービスを対象としている。

 エネルギー設備に大きな資金を投入しないですむ経営ニーズが高まり、市場は拡大してきた。近年は、事業運営で使用する全ての電力を再生可能エネルギーで賄うことを宣言したRE100(Renewable Energy 100%)が発足したことから、自家消費を目的とした太陽光発電システムへの関心が高まっている。また、VPPが実運用されると需要家が発電事業者になれるが、資金力の弱い需要家も多いとみられ、今後はリースサービスの活用が広がると予想される。

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