注目の電力スタートアップLO3 Energyが目指す、分散電源時代の新たな電力流通とは和田憲一郎が語るエネルギーの近未来 (15)(3/3 ページ)

» 2019年11月25日 07時00分 公開
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ブロックチェーンを活用した電力取引基盤「Exergy」

和田氏 3つ目のプロダクトはどのようなものでしょう。

大串氏 3つ目は、電力データの取引プラットフォーム「Exergy」です。これは現在開発中なのですが、電力データを業界内外で利活用する取り組みが今後増えるという想定のもと、安全に電力データを取引できる手段を提供しようという試みです。例えば、宅配業者は人が家にいるかどうかということを、電気を使っているかどうかでリアルタイムで判別したいと思っています。また家電メーカーは、一般的に商品を売ったら終わりですが、販売後に顧客がどのように使っているかという情報を知りたいと考えている。このように電力データを求める企業は多く、今までは捕捉されなかった細かい電力データも含め、データ利活用のニーズが増えると想定しており、プライバシーやセキュリティーの問題も含め電力データの取引を安全に行える基盤の構築を目指しています。

和田氏 御社ではブロックチェーンはどのように活用されているのですか。

大串氏 各顧客の取引記録などをブロックチェーンに記録保存し、後々でも把握できるようにしています。ブロックチェーンは全体の一部であり、全体のソリューションとしてどれだけ価値提供ができるかが重要と考えています。

和田氏 LO3と似たようなビジネスを行っているのはあるのですか。

大串氏 例えば、オーストラリアのPower Ledgerが似ていると思います。プロダクトは似ていますが、彼らは支払用のトークンも含む電力取引ソリューションを提供しています。しかしLO3はトークンを持たず、小売電気事業者に価値を提供できるソリューションの開発に注力しています。

和田氏 最後に今後の展開や抱負について教えてください。

大串氏 今までは実証が中心でしたが、これをきちんと商用フェイズに乗せていくことです。言い換えると、Pandoの価値を望んでいる顧客を探し出し、その顧客にしっかりと価値を提供し、大満足してもらえる顧客を増やしていくことになります。

図表7:LO3 ENERGYのプロジェクト

取材を終えて

 丸紅や京セラと電力取引に関する実証試験を行っているLO3に注目していたが、まさか日本で取材可能となるとは思わなかった。話を聞いてみると、スタートアップ企業にも関わらず、欧米中の大手企業と実証試験を行っており、そのスケールの大きさに驚かされる。取材した大串氏も言っているように、卒FITは今後日本でも大きな課題となるように思われる。その時、現実的に課題を解決できるLO3のような企業が必要になってくるのではないだろうか。多くがまだ実証試験段階とのことであるが、ここ数年で実用化への道を切り開いていくであろう。これまでにない新しいビジネス形態に期待したい。

筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。


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