見通しが効かない新興感染症の恐さ、新型コロナ後の持続可能な社会像を考えるソーラーシェアリング入門〜番外編その3〜(2/2 ページ)

» 2020年05月21日 07時00分 公開
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大都市はインフラの断絶に耐えられるのか

 感染症の厄介なところは、今回のコロナウイルスのように全世界で同様の事態がほぼ同時期に進行していくことです。大地震の後であれば、被害に遭った地域や国以外から多くの救援が期待できます。しかし、パンデミックが発生している段階ではどこの国・地域も、まず自分たちの中での対策に取り組まねばならず、他の地域をサポートすることが出来ません。日本国内ではそこまで深刻な事態がまだ発生してはいませんが、同様の事態が発生した際には、エネルギーや食料の供給が滞ることも十分に想定されます。これは、先ほど述べた人員の問題だけでなく、諸外国からの輸入の途絶も起こり得るからです。

大都市はインフラサービスが停止した時にエネルギーと食料を確保できるか

 コロナウイルスの問題があぶり出した私たちの社会が取り組むべき課題は、今回だけに限りません。治療薬がなく、社会的に許容できない水準の死亡率となる新興感染症が再度発生した場合には、一時的ではあっても感染抑制のために再び社会経済活動の縮小を図らなければなりません。日本政府は最近になってやっと言及し始めましたが、外出自粛要請や休業要請を始めとして社会経済活動を抑え込んできたのは、医療体制を整え、治療法やワクチン開発までの時間を稼ぐためです。

 そう考えると、今回のような事態はこれからも繰り返される可能性を念頭に、社会システムを再構築しなければなりません。仕事がなくなって個人の収入がなくなるというだけでなく、お金があっても生活に必要な資源が入手できなくなる可能性にどう備えるか、少なくとも生きるためのエネルギーと食料を最低限入手する手段を、各地域で持つ必要が出てきます。もし2003年にアジアで拡大した、致死率10%を超えるSARSのような新興感染症が大規模に蔓延したときには、インフラサービスの維持すら困難になることが想定されるからです。

 エネルギーや食料確保の観点からアフターコロナに向けた対策を考えていく中で、今回の事態で判明したことは、都市への集中よりも地方への一定の分散の方がよりサスティナブルなのではないかということです。次回はその理由を取り上げていきます。

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