そもそも今回の素案の前提にあるのが、「46%削減」の達成には、電源構成における非化石電源の割合を約6割にまで引き上げる必要があるという試算だ。経済産業省ではこの前提にもとづき、特に再生可能エネルギーの導入量をどこまで積みませるかの検討を進めてきた。
具体的には、環境省や国土交通省、農林水産省など、各省の管轄領域において、「どこでどれだけの導入量を積み増せるか」を検討してきた形だ。その結果出てきたのが、2030年度における再生可能エネルギーの発電量は3126億kWhという試算で、これは現行目標より約2割多い発電量である。この試算における各再生可能エネルギーの2030年における累積導入量は、太陽光は100GW(現行のエネルギーミックス水準:64GW)、陸上風力は15.9GW(同:9.2GW)、洋上風力は3.7GW(同:0.8GW)、地熱は1.5GW(1.4〜1.6GW)、水力が50.6GW(同:48.5〜49.3GW)、バイオマスは8.0GW(同:6〜7GW)である。
一方、今回の素案で記載した再生可能エネルギー比率36〜38%は、発電量に換算すると3300億〜3500億kWhとなる。つまり、これまでの検討における導入量に加え、さらに200〜400億kWhの発電量を積み増す必要があるという試算だ。
では、どのように再生可能エネルギーを積み増すのか。素案では以下の4つの方針を掲げる。
北海道に4GW程度の洋上風力の導入など、具体的な記載がある電源もあるが、開発速度などの兼ね合いから、現実的に「積み増し」の主要電源となるのは太陽光となりそうだ。今後の各省庁が推進する、積み増しに向けた導入施策の内容に注目したい。
今回の新たなエネルギー基本計画の検討にあたっては、「2030年度までに温室効果ガス46%削減」という目標がトップダウンで決まった背景もあり、現在の延長から考える積み上げ式ではなく、「ありたい将来の姿」から逆算する「バックキャスト」での計画立案が求められた。それ故に各数値目標については「野心的なもの」というエクスキューズが目立つ素案となった。特に再生可能エネルギーについては、これまでの検討会の中で「これ以上の積み上げは簡単ではない」とされた目標から、さらに積み増しを目指す結果となっている。
再生可能エネルギーの積み増しも高いハードルだが、20〜22%という原子力発電の目標も容易ではない。目標の達成には、これまで原子力規制委員会に安全審査の申請がされた27基全ての再稼働が必要となるが、現時点では10基の稼働にとどまっている。加えて、法定で定める運転上限に達する発電所の扱いも定まっていない。こうした背景から、素案を公表した有識者会議では、委員からその内容の実現性を疑問視する声も上がった。
素案は今後、有識者会議などでさらに内容の検討を進め、パブリックコメントを経たあとで閣議決定される。
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