日本の新たな「エネルギー基本計画」、今後の再エネ普及に必要な“3つのアクション”とは?ソーラーシェアリング入門(51)(2/2 ページ)

» 2021年10月28日 07時00分 公開
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太陽光発電所の資材は戦略物資、国内の再エネ産業の育成を

 新型コロナウイルス感染症が世界的な流行を見せ始めてから、太陽光発電関連資材は値上がりを続けています。当初は太陽光パネルの最大の生産国である中国国内の製造や物流の停滞から始まり、国際物流の混乱によるコンテナ価格の上昇、そしてグリーンリカバリーによる再生可能エネルギーへの投資拡大と続き、昨今では中国国内のエネルギー需給ひっ迫による太陽光パネルの生産低下が起きています。

 これによって、本稿執筆時点では2019年の冬と比べて、太陽光パネルの価格が1.5〜2倍まで値上がりしています。この状況が続けば、FIT/FIP制度の前提となっている太陽光発電設備の導入コストの段階的低減どころか、目先の急激なコスト上昇が引き起こされてしまい、その状況下で導入量を増やしていくためには調達価格の引き上げに向かう必要が出てきます。しかし、現在の経済産業省・資源エネルギー庁の姿勢では、そうした外的要因による調達価格の引き上げは到底実施できないでしょう。

 それでもなお、2030年に向けた再生可能エネルギー導入ペースを上げていかねばならないとするなら、そうした引き上げ措置を行うに足る理由が必要になります。その一つが、太陽光発電関連資材の国内での確保です。

 かつて世界を席巻した日本の太陽光パネルメーカーが没落して久しいですが、ここから本格的に太陽光発電の普及拡大が始まるというタイミングで、残された国内メーカーが青息吐息という状況を放置して良いとは思えません。先ほど挙げたように、2030年までに60GW以上の太陽光発電を導入していくとなれば、その投資額は少なく見積もっても12兆円以上になります。単年度8GWの市場になれば1.6兆円以上の規模となり、そのうち半分程度が資材コストですから、それが延々と国外に流出していくことを座視すべきではありません。洋上風力発電などは国内産業の育成が図られていますが、今回の第6次エネルギー基本計画と新たなエネルギー需給見通しの策定を契機に、太陽光発電を含む全ての再生可能エネルギー電源種で国内産業の育成方針を示すべきです。

日本の再エネ産業の未来に向けて

 ここまで、大きく3つのアクションを整理してきました。基本計画が決まった以上、これから考えるべきはその内容をいかにして実行に移していくかですが、太陽光発電を含む過去10年間の我が国における再生可能エネルギー政策を振り返ると、ここまでに挙げたような具体的な数字の議論が不足していたように感じます。

 経済産業省・資源エネルギー庁がFIT制度による事業者の動きに委ねるままに普及の様子を眺め、問題が生じた部分にだけ事後的に「事業規律強化」の対応を図ってきた結果、太陽光発電はバブル的に伸びたものの国内産業としては定着せず、膨大な再エネ賦課金を投じたに値するだけの成果が得られていません。まずは、目指すべき市場規模、それを実現していく投資資金、その資金を国内にとどめるための産業育成という観点から政策議論を速やかに実施して、2030年に向けた再生可能エネルギー導入のスタートを切っていきましょう。

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