2022年度夏季の猛暑H1需要に対する予備率は、すべてのエリアにおいて、安定供給に最低限必要とされる予備率3%を確保できる見通しとなった。
しかしながら、7月の東北・東京・中部エリアにおいては予備率は3.1%と非常に厳しい見通しである。これをkWベースに換算した予備力で表すならば、東北1万kW、東京5万kW、中部2万kWであるため、小規模な電源が1つ脱落するだけで、予備率は3%を割り込むことが予想される。
このため後述するように、今夏に向けては追加供給力公募等が実施されることとなった。
2022年度冬季の厳寒H1需要に対する予備率は、2023年1月と2月に東京から九州の7エリアで安定供給に最低限必要とされる予備率3%を確保できない見通しである。
東京エリアは特に厳しく、1月がマイナス1.7%、2月がマイナス1.5%となっている。
なお表2で、西の5エリアで予備率が同じ数値(2.2%等)となっているのは、地域間連系線の空容量の範囲内で、各エリアの予備率が均平化するように供給力を移動させているためである。地域間連系線に十分な空容量が無い場合に、エリアにより予備率の値が異なる状況となる。
また最大需要が発生する時間帯はエリアにより異なるため、需給バランスの算定において、この「不等時性」が考慮され、需要から減じられている。
冬季の予備率が最も厳しい東京エリアでは、その需給ギャップは1月で254万kW、2月で247万kWと大きなものとなっている。
なお、東京エリアの冬季H1需要は1月・2月とも5443万kWを見込んでいる。2021年度の冬季H1需要は5332万kWと見込まれていたことと比べると、111万kW(2.1%)の増加となっている。このように、電源トラブルだけでなく近年の冬季最大需要の増加も、需給逼迫が深刻化する一因となっている。
需給バランス評価において、現時点で供給力として計上してはいないものの、稼働できれば追加の供給力となり得る電源がいくつか存在する。その1つが、IGCC(石炭ガス化複合発電)実証試験機である。
同実証機を所有する勿来IGCCパワー合同会社(52.5万kW)と広野IGCCパワー合同会社(54.3万kW)は、今年度の高需要期においては定格出力での運転を予定しているものの、十分な安定運転実績がないため、現時点では供給力として計上することは出来ない。
また表3のように試運転中の新設火力は、試運転に伴うトラブルの可能性が高いことなどから供給力として見込んでいないものの、稼働ができれば実需給断面での追加の供給力となり得るものである。
東京エリアにおいては、現在休止中であり1月までに再稼働の可能性を検討している火力は1台(58万kW)存在するが、この再稼働だけでは需給ギャップを埋めることは出来ない。
そこで、運用段階では活用可能性のあるIGCC等の電源などを、仮に予備率3%ラインまで積み上げた姿が図3である。
2023年1月の場合、FC(東京中部間周波数変換設備)のマージンを活用することも想定される。ただしマージンは本来、EPPS(緊急融通制御装置)による緊急時の制御機能に充てる容量であることから、マージンを利用している間は制御機能が働かないため、大規模停電などのリスクを伴った選択肢となる。
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