2022年3月の電力危機を検証、実際の節電行動の振り返りと今後の対策エネルギー管理(3/5 ページ)

» 2022年05月30日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

小売事業者は節電要請にどう対応したのか

 資源エネルギー庁は3月22日の節電行動に関して、小売電気事業者705社に対してアンケート調査を行い、220社から回答を得た。このうち東京・東北エリアに供給している小売事業者は137社である。

 国からの節電要請を受けた小売事業者が、需要家に対して実施した節電に関する取り組みは図3のとおりである。

図4.小売事業者から需要家に対する節電要請 出所:電力・ガス基本政策小委員会

 需給逼迫警報発令の単純な連絡やこれに伴う節電のお願いが最多であり、何も実施しなかった小売事業者も3割程度存在する。

 自家発焚き増しを含むDRを実施した小売事業者は14%と少数であるが、DR実績(3月23日)は旧一般電気事業者が300万kWh、新電力の合計では99万kWhに上った。

 DRを実施していない小売事業者は、DRを行うためのシステムや人員体制が未整備であることや、その開発コストが高いことをその理由として挙げている。

 また自治体や公共施設、法人等の需要家に対して入札によって受給契約が決まる場合、元の契約にDRが含まれていないとDRが実施できないことも課題として指摘されている。自治体等は今後率先して、入札条件にDRの実施を含めることが期待される。

省エネ法に基づく「需要の平準化」が課題に

 現在、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)では電気事業者に対して、「需要の平準化」に資する取組等に関する計画を作成することを義務付けている(よって、DRそのものが義務とされているわけではない)。

 「需要の平準化」とは、元々はいわゆる時間帯別料金メニュー(ピークシフト)を想定しており、必ずしもDRだけを意味するものではないが、アンケート回答219社のうち、「需要の平準化」メニューを措置している小売事業者は33社(約15%)に留まった。

 旧一般電気事業者5社はkW報酬型の契約を保有しており、その総契約量は約130万kWに上るが、その他の新電力は、kWを定めないkWh報酬型の下げDRを実施している。

 なお省エネ法は今般の法改正により、固定的な「電気需要の平準化」から動的な「電気需要の最適化」に見直しされるため、上げ/下げ両面でのDRの一層の活用が期待される。

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