揺らぐ電力の安定供給、6月の需給逼迫の検証で分かった今後の課題とは?エネルギー管理(2/4 ページ)

» 2022年07月28日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

火力発電所の補修停止が影響、供給力確保へ追加施策を実施

 夏季の高需要期における供給力不足を回避するため、従来から発電事業者は電源の補修を6月までに実施するよう計画している。

 端境期とされる6月には、全国で約2,000万kWの補修計画が予定されており、東電エリアでは6月最終週の補修停止量は500万kW程度に上る。

図2.月別の火力補修量分布(全国) 出所:電力・ガス基本政策小委員会

 このように、需要の記録的な増加と火力電源供給力の不足の同時発生により、深刻な需給逼迫が発生することとなった。

 なお、夏季の電力高需要は晴天日に発生することが多いため、太陽光発電の最大出力(東電エリア)は1,300万kWを超えており、最大需要の1/4程度をカバーしている。1日24時間の発電量(kWh)で見ても、再エネが一定の役割を果たしていることが分かる。

 他方、冬季には曇天の寒い日や日没後にピーク需要が発生することが多いため、状況は異なることに留意が必要である。

図3.東電エリア 発電電力量kWh(6月27日) 出所:電力・ガス基本政策小委員会 供給力追加の対策

 需給逼迫を緩和するため、供給力追加の対策として東電パワーグリッド(PG)は、「電源I'の発動」「電源IIの増出力運転」「自家発焚き増し要請」「50Hz・60Hz両用機の切替(16万kW)」「供給電圧調整」などの対策を実施した。

 また電力広域的運営推進機関(広域機関)は、複数の一般送配電事業者に対して、東電PGに向けた電力融通指示を発出した。この融通指示(最大で135万kW)は6月27日から7月1日の間で20回に上る。

 地域間連系線の容量は、JEPXスポット市場や時間前市場の電力卸取引で活用することが原則であるため、広域機関による融通指示は、実需給に近い段階(概ね2時間前)で発出されることとなる。

 今回、他エリアからの融通にあたり、地域間連系線の通常の運用容量では融通量が不足したため、東京中部間のマージン(60万kW)を利用することや、東京東北間の運用容量を一時的に拡大(55万kW)する対策も実施された。運用容量の拡大は、別の系統事故が同時に発生した際に停電となり得る、一定のリスクを抱える対策である。

 これらの対策により、約200万kWの供給力が確保された。

 また、上述の火力補修停止は東電エリアで当初600万kWが計画されていたが、6月最終週の需給逼迫に備え、100万kWの補修日程を変更(繰り延べ)することにより、供給力が確保された。

 なお、今夏の需給逼迫の事前対策として、東電PG等の一般送配電事業者8社は供給力(kW)公募を実施していた(落札総量136万kW)。これは夏季を対象とした公募であるため、本来の契約開始は7月1日以降であるものの、落札事業者との協議により一部の電源が前倒しで6月中に運転開始された。

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