「電力需給ひっ迫注意報」の新設など、3月の需給逼迫を踏まえ一定の改善は進んだが、今回6月の需給逼迫を検証する中で、さらなる課題が浮き彫りとなった。
現在の供給信頼度評価の基準(0.048kWh/kW・年)は、夏季・冬季のみ厳気象対応(2%)と稀頻度リスク対応(1%)を考慮したH3需要の予備率10%と算定しているのに対して、春季・秋季はH3需要要の7%のみが考慮されている。
現実に3月や6月に深刻な需給逼迫が発生したことから、「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」ではすでに、これを見直す方向性が示されており、春季・秋季も厳気象や稀頻度リスクを考慮することとされた。
一般送配電事業者は調整力として電源Iや電源IIを事前に確保し、オンラインでその出力把握が可能であるのに対して、オフラインの電源IIIは発電計画により間接的にその出力を把握するに留まっている。
電源?は前日段階で一旦、発電計画を作成・提出したのち、需給状況やJEPX時間前市場での約定結果等に応じて、随時、発電計画を修正・再提出していくこととなる。
東電エリアでは、電源?はエリア全体の供給力の43%(約2,300万kW)を占めている。
今回6月は、突然の「電力需給ひっ迫注意報」により、発電計画を上方修正した電源?が多かったため、前日段階からゲートクローズまでの計画変更量が100万kWを超える規模となった。
計画変更自体は自然なことであるが、今後は電源IIIの運転状況のリアルタイム把握に向けた検討が必要とされる。
また、太陽光発電等の再エネ電源の出力予測についても、一層の精度向上が求められる。
需要規模の大きな東電エリアでは、夏季の気温が1℃変化すると需要は150万kW程度変化することが知られている。150万kWとは、予備率3%弱程度に相当する規模である。
よって、まずは気温・気候の正確な予測が重要となる。
ところが気象庁によると、関東甲信地方の翌日最高気温予想の平均的な誤差(RMSE:二乗平均平方根誤差)は、過去20年平均で1.9℃、(漸進的に改善が進み、直近の2021年は1.5℃)と報告されている。
気温予想自体が2℃外れてしまえば、電力需要は300万kW程度・予備率6%程度も変動してしまうことになる。
また気温以外にも、電力需要を変動させる要因は多数あり、需要予測精度の向上は容易ではないものの、継続的な取り組みが求められる。
2022年度は、夏季・冬季いずれも厳しい需給見通しとされており、特に冬季は北海道と沖縄を除く全国8エリアで、安定供給に必要な予備率3%を下回ることが想定されている。
またウクライナ危機や産ガス国の設備トラブルにより、燃料輸入にも懸念材料が多く残された状態である。
短期的に取り得る対策は限られているものの、まずは供給力kW公募や追加供給kWh公募を通じて、最低限の供給力が確保されることを期待する。
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