CO2削減に使える「J-クレジット制度」、森林吸収の扱い方が大幅改定へ法制度・規制(2/4 ページ)

» 2022年08月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

森林吸収PJにおける追加性要件を見直しへ

 現在J-クレジット制度では、森林吸収に関連する方法論として「森林経営活動」(方法論番号FO-001)と「植林活動」(方法論番号FO-002)の2つのみが存在する。

 FO-001におけるベースラインは、適切な森林施業が継続されなかった場合の吸収量である。

 森林経営PJにおける現行ルールでは、PJ登録に当たっての追加性の判断基準は、補助金収入を含め、認証対象期間中の収支見込が赤字であること、とされている。

収入[収益+補助金]< 経費[森林経営に要する経費+銀行等借入利子]


 一般的に日本では林業コストが高く、平均的には補助金を含めても赤字となることが指摘されている。

図3.林業経営の収支(施業地レベル1haの試算) 出所:森林小委員会

 ところが、現行の追加性判断基準ではPJ期間(8年)の収支で判断されるため、過去に植栽した分の主伐を含む場合、黒字とみなされ「追加性無し」と判断される(つまりJ-クレジットPJとして登録できない)という課題が存在した。

表1.林業経営のステージに応じたモデル収支 出所:森林小委員会

 このため、現状では日本の林業は長期的収支が赤字となる蓋然性が高いことを踏まえ、認証対象期間中に主伐計画が無い場合等は、追加性評価は不要とするよう制度を変更する。この追加性要件の見直しにより、森林経営活動PJの登録件数の増加が期待される。

図4.森林経営PJ 追加性の新判断基準 出所:J-クレジット制度運営委員会

 一般的に炭素クレジットは、企業等が自社のGHG排出量をオフセット(相殺)するために売買されるため、クレジット(例えば100トン)の買い手A社は、自社での100トンの削減努力が不要となる。

 よって追加性の無い安易なクレジット化は、社会全体でのGHG排出量を増加させてしまうおそれがあることに留意すべきである。

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