CO2削減に使える「J-クレジット制度」、森林吸収の扱い方が大幅改定へ法制度・規制(4/4 ページ)

» 2022年08月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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環境価値の二重主張を回避、表現に関する規定を見直しへ

 一般的に環境価値の証書やクレジット制度においては、環境価値の売り手と買い手の双方が同時に(つまり二重に)、環境価値を主張することは禁止されている。

 例えばFIT制度においても、環境価値(CO2削減価値)を手放したFIT電気は、CO2排出係数はゼロではなく、全国平均の排出係数を持つ電気として扱われている。

 J-クレジット制度においては「環境価値の二重主張の禁止」として、「クレジットを他者に譲渡(売却)したPJ実施者は、譲渡(売却)したクレジット分を自らの排出削減量として主張してはならない」と定めている。

 CO2排出係数は客観的数値で定められるものの、事業者の主張・宣伝行為には曖昧さ、主観的な判断が不可避であるため、J-クレジット実施規程では、事業者が主張できる/できない内容を以下のように「例示」している。

1.主張できる内容:(例)当該プロジェクトは、J-クレジット制度に登録されたプロジェクトです。

2.主張できない内容:(例)当該事業によりCO2を削減しています。

 上記の「2」が主張できない内容とされているのは、クレジットの売り手はすでに環境価値を手放したにも関わらず、あたかも環境価値を保有するとの誤解を一般消費者等に与えるおそれがあるためである。

 また、委員会では上記「1」の例示を以下の2つに変更することが提案されている。

主張できる内容(案):

新・例1:当該事業は、J-クレジット制度に登録された排出削減(又は吸収)プロジェクトとして、地球温暖化対策に貢献しています。

新・例2:当該事業は、J-クレジット制度に登録されたプロジェクトとして、年間約XXトンのCO2排出削減(または吸収)を通じ地球温暖化対策に貢献しています。

 新たな例1については変更を支持する委員が多かったものの、例2については、一般市民の誤解を招くことが不可避であり二重主張に該当するとして、すべての委員から反対が相次いだ。

 事務局では、あくまで売り手の観点からこの変更を提案していると推察されるが、クレジットの買い手の観点では、環境価値がきれいに手放されておらず、二重主張との批判のリスクがあるクレジットを好んで購入するとは考えにくい。つまり例示の変更次第では、J-クレジット市場をかえって萎縮させてしまうおそれもある。

 どのような商品・サービスも、買い手が需要を創造することにより市場が拡大されるものである。作り手・売り手目線ではない制度改定が進められることを期待したい。

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