水素・アンモニアの低コスト化へ、政府が製造・供給インフラの整備に支援策エネルギー管理(2/4 ページ)

» 2022年10月26日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

経済的支援策の仕組み

 水素・アンモニアのサプライチェーン構築に対する経済的支援策としては、民間ベースで供給者と需要家が直接取引をして製造量・販売量・取引価格を決めることを前提とした、「市場型支援制度」とする。

 具体的には、FIP制度に類似した「CfD(Contract for Difference)」の導入が予定されている。

 CfDでは、水素・アンモニアの製造・供給総コスト(単価)を「基準価格」として、需要家への販売価格等を「参照価格」とする。当面の間はコストが販売価格を上回ることが予想されることから、その差額を事業者に対して補填(支援)する仕組みである。

将来的に、「参照価格」が「基準価格」を上回った場合は、事業者は基準価格超過分を国に返還する。

図2.経済的支援策CfDのイメージ 出所:水素政策小委員会

 新たな支援制度CfDは、事業者の投資予見性を上げることを目的としていることから、その支援期間については水素・アンモニアの製造設備や輸送に使う船舶などのインフラ設備の償却期間を考慮することが必要とされる。

 一般的にこれらインフラ設備の償却期間は15年程度であることから、CfD支援期間は原則15年間としつつ、その時点でのエネルギー事業環境等を勘案して、最長20年間まで期間の延長を検討することが提案されている。

基準価格の設定方法

 「基準価格」は総合評価方式の1評価項目であることから、応札する事業者自身が、水素・アンモニアの製造・輸送に係る初期投資費用や操業費と合理的な利益水準をベースに算定することとなる。

 制度初期においては、水素・アンモニアの製造源や輸送キャリア等の類型化が難しいことから、ファーストムーバーについては基準価格をプロジェクトベースで設定することとして、セカンドムーバー以降の段階では基準価格の目安を類型ごとに設定し、案件選定に活用していくことが予定されている。

 しかしながら水素・アンモニアのような新規性の高い事業では、現時点で決定した基準価格が15年(20年)といった長期に渡って投資回収可能な水準であり続けるかどうかを見通すことは難しい。単純なCfDだけでは事業者の予見性が充分ではなく、新規投資が進まないことも懸念される。

図3.基準価格の見直しイメージ 出所:水素政策小委員会

 このためファーストムーバーに限っては、基準価格を事業の実績と見通しに合わせて一定期間ごとに見直し(図3の案②)、支援額を適切な水準に合わせる特別な措置が提案されている。その際、基準価格に上限を設けるなど、支援水準に規律を持たせることも想定されている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.