誤解がないように申し上げるが、筆者に自己投資やオンサイトPPA以外の手法を否定する意図はない。カーボンニュートラルを実現する一般的な手順としては、まずは省エネを徹底してエネルギー使用量を絞ったうえで、エネルギー自体の脱炭素を進めるステップとなるが、最後にどうしても残る排出量に関しては「再エネ電力証書」のような一定量のクレジット(以下、カーボンクレジット)の活用なしでは実現が難しく、むしろ必要不可欠の手段であると考えている。
ただし、これからカーボンニュートラルを本気で目指す企業が増えてくると、カーボンクレジットの流通量は減っていくことが見込まれる。したがってカーボンクレジットに過度に頼ることなく、自己投資などとバランスよくポートフォリオを考えることが重要であり、これが今のタイミングで投資の検討を勧める第3の理由である。
カーボンクレジット8とは国連や各国政府などにより認証されたGHG削減量を意味し、【t-CO2】単位で売買されるものである。例えば100t-CO2のクレジットを購入・償却した事業者は自己のGHG排出量から100t-CO2分を減算できる一方で、クレジット発行者は自己のGHG排出量に100t-CO2を加算して報告することが必要になる(世界全体でのトータル排出量は不変)。
京都議定書のように、排出義務を負う先進国と負わない途上国に分かれていた状況下ではこの仕組みは機能したが、パリ協定以降、途上国も含めて各国が何らかの目標を持ち、企業/団体も各々がカーボンニュートラルに向けて取り組みを進めていくという状況になると、カーボンクレジットは簡単には出てこなくなることはお分かりいただけるだろう。
7. 認証先により複数存在、国連/政府主導としては京都メカニズムクレジット(国連)、JCM(二国間)、J-クレジット(日本)など、民間主導としてはVCS、Gold Standardなどがある
今回は攻めのGXの2回目として、カーボンニュートラルを今後目指していく中で、カーボンクレジット等の活用と合わせて、グリーンエネルギー投資全体への追い風を生かし、積極的に直接投資の検討をすることの意義について言及した。もちろん、物理的に電源を設置するスペースがないなどの事情もあるであろう。そうした場合にはコーポレートPPAの活用が有効だ。
紙面の関係で今回ほとんど触れられなかったが、コーポレートPPAについては、取引先の物流センター屋上や調達先の工場敷地内などに電源を設置するなどサプライヤーとの連携モデルや、地元自治体施設の遊休スペースに電源を設置するなど地域との連携モデルなど色々なバリエーションが考えられる。これについては、改めて別の機会に触れさせていただきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.