“LNG争奪戦”の加速で高まる供給断絶リスク、政府は「戦略的余剰LNG」の導入を検討エネルギー管理(3/5 ページ)

» 2022年12月15日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

日本におけるロシア化石燃料の状況

 日本が輸入する主要な化石燃料のうち、ロシアからの輸入比率はLNGで8.8%、原油で3.6%、石炭で11%を占めている。

図5.日本のLNG輸入国と数量 出所:石油・天然ガス小委員会

 日本はこれまで「サハリン2」プロジェクトからLNGと、随伴生産されるコンデンセートに由来する原油「サハリンブレンド」を輸入している。サハリン2の新たな事業主体「Sakhalin Energy LLC」に対しては、三井物産(12.5%)と三菱商事(10%)の出資継続がロシア政府から承認されている。

 現在「G7+豪州」では、ロシア産原油に対して60ドル/バレルの「プライスキャップ」を導入することを合意しており、日本でも外為法告示を改正し、上限価格を超えるロシア産原油の輸入等を禁止している。

 ただし、サハリンブレンドをサハリン島から搬出・輸入することが、LNGの生産継続に不可欠であることから、例外的にサハリン2で生産された原油は、プライスキャップの適用除外とされている。

日本のLNG調達に関する短期的な対策

 図5のとおり、日本の最大のLNG輸入国はオーストラリアである。その豪州連邦政府は、豪州国内ガス価格の高騰を受け、「ADGSM(政府が直接介入し、LNGの輸出を止めることができる制度)」の来年度の発動を検討開始した。

 これに対して日本政府は豪州政府に対して働きかけを行い、結果として豪州政府は来年のADGSM発動は不要であることを公表した。またADGSMの改正により、ADGSM発動時でも長期契約は保護され、日本の長期契約に影響が及ばないことが確約された。

 さらにマレーシアでは、土砂崩れによるガスパイプライン漏洩(ろうえい)が生じたペトロナス社(マレーシア国営企業)が、不可抗力による供給停止(フォース・マジュール)宣言を日本の買主に通知している。

 このため日本政府からペトロナス社に対して、設備の早期復旧や代替供給の確保を通じて、日本企業への影響を最小限のものとするよう要請している。

 LNG価格の高騰は、LNGを使用する電力会社の収支と資金繰りに大きな影響を与えている。このため公的金融機関の一つである国際協力銀行(JBIC)は、JERA社に対して1,300億円の融資(民間金融機関との協調融資)を実施することを決定した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.