“LNG争奪戦”の加速で高まる供給断絶リスク、政府は「戦略的余剰LNG」の導入を検討エネルギー管理(5/5 ページ)

» 2022年12月15日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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SBL確保支援事業の事業者要件

 SBLはその制度趣旨から、いざという時にはギリギリのタイミングでも、指定された日本企業(LNG受入基地)への販売・デリバリーを行うことが望ましい。

 このため、LNG船が日本の港へ着港する15〜18日前までSBLを保有し続け、経済産業省の指示の下、指定された日本企業へ販売を行うことをSBL事業者の認定要件とする。

 ただし、通常はこのような緊急指示は発出されず、SBLが無駄になってしまうことも想定される。このため、他国事業者に転売するなど、できる限り費用を抑えた形でLNGを処理することも要件とされる。

 このほか、安定的な運用を確保するため、LNG取り扱いの経験や総合力を判断する観点から、以下のような認定要件が設けられている。

  1. 日本法人
  2. LNGの輸入量又は販売量が360万トン/年以上
  3. 異なる5つの国以上を主たる供給源とするターム契約を計5本以上保有
  4. 自社でコントロールできるLNG船舶を保有(全体で10隻以上又はSBL用に3隻以上)
  5. 自社の権益LNGを保有(80万トン/年以上)
  6. LNG受入基地の保有(1地点以上)又は基地利用権の保有
  7. トレーディング事業に専業で従事している従業員が10名以上
  8. トレーディング事業を用途とするコミットメントラインとして1,000億円以上保有

 なお、民間事業者間の協力やSBLのみでは対応できない非常事態においては、電気事業法・ガス事業法のもと、国の外交力・信用力を背景にJOGMECによりLNGの調達が行われる。

図7.国が関与するLNG調達の全体像 出所:石油・天然ガス小委員会

LNG調達に関する中長期的な対策

 日本政府は安定的な資源確保に向けて資源外交を積極的に展開しており、タイやマレーシア等の国々とLNG分野での協力覚書(MOC)を締結している。

 また新規の案件(グリーン・フィールド)は立ち上げに長期間を要するのに対して、既存の液化プロジェクトを拡張し生産能力を拡大する「ブラウン・フィールド」案件は比較的リスクが低く、早期に追加生産が可能であるため、この獲得に向けた取り組みが進められている。

 また国際連携の一つとして、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)」が推進されている。

 アジアには、LNGの生産国や消費国など様々な国々が存在するが、エネルギーの安定供給と脱炭素化の同時達成のため、日本からの支援とリーダーシップが期待される。

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