バイオマス発電に「ライフサイクルGHG基準」、2023年4月から適用スタートへ法制度・規制(1/4 ページ)

2023年4月から、バイオマス発電における燃料の調達から利用に至るライフサイクル全体のGHG排出量の抑制に向けた新制度がスタートする。このほどその新制度の方向性tと概要が明らかになった。

» 2023年01月06日 15時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 「持続可能性」は、あらゆる電源に求められる要素であるが、バイオマス発電はその燃料の製造や輸送が必要であるなど、他の再エネとは異なる特徴を持つものである。

 このため資源エネルギー庁は2019年4月に「バイオマス持続可能性ワーキンググループ(WG)」を設置し、FIT/FIPバイオマス発電・燃料における合法性や持続可能性(環境、社会・労働、ガバナンス、食料競合)とその第三者認証の在り方について検討を行ってきた。

 またバイオマス発電は、燃焼時のCO2排出はカーボンニュートラルであると国際的にも整理されているが、原料の栽培や燃料製造、輸送時等にはGHGが排出されている。このため、ライフサイクル全体を通じたGHG排出量の抑制が求められている。

図1.バイオマス燃料の製造から消費までの工程例 出所:バイオマス持続可能性WG

 同WGではこれまで、

  1. ライフサイクルGHG排出量を算出するための「計算式(算定式)」
  2. 持続可能性の評価基準となるライフサイクルGHG排出量の「基準値」
  3. これらを確認するための「手段」や「規定値」

などの検討を行ってきた。

 WGの第20回会合では、2023年4月からのライフサイクルGHGに関する新制度開始に向けて、一定の方向性が示された。

ライフサイクルGHG排出量の算定式

 ライフサイクルGHG排出量を算定するためには、その対象ガスや対象工程・排出活動、配分(アロケーション)等を定める必要がある。

 WGでは、EUの制度(EU RED II)や国内のエネルギー供給構造高度化法等を参考として、表1のようにライフサイクルGHG算定式が整理された。

 現時点、土地利用変化を含む炭素ストックの変化については、直接的土地利用変化のみが計上される。また輸送工程については往路だけでなく、復路便の排出も対象としており、往路と同等もしくは航海距離比率30%の計上が必要とされる。

1.対象GHG

  1. 二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)
  2. 温暖化係数はメタン(CH4):25、一酸化二窒素(N2O):298

2.バウンダリ

  1. 土地利用変化を含む炭素ストックの変化、栽培、加工、輸送、発電を算定対象とする。
  2. 発電所やバイオマス燃料の製造工場などの設備建設による排出は考慮しない。
  3. CO2回収・隔離、 CO2回収・代替利用(バイオマス起源のCO2に限る)によるGHG排出が回避できる場合、排出削減として考慮することができる。
  4. 活動量の把握方法や排出係数の設定は「再生可能エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン」を参考とできるものとする。

3.算定式

(算定式)E = estock + ecultivate + eprocessing + etransportation + egeneration - erccs - erccr

E = 発電効率による変換前の燃料利用によるGHG総排出

e stock = 土地利用変化を含む炭素ストックの変化に伴う排出量・排出削減量

e cultivate = 栽培による排出量

e processing = 加工による排出量

e transportation = 輸送による排出量

e generation = 発電による排出量

er ccs = CO2回収・隔離による排出削減量

er ccr = CO2回収・代替利用(バイオマス起源のCO2を回収するもののみを対象とする)による排出削減量

表1.FIT制度におけるライフサイクルGHG算定式 出所:バイオマス持続可能性WG

 なお熱電併給を行うバイオマス発電所については、発電だけでなく熱利用も考慮することとして、バイオマス燃料のライフサイクルGHGを、生産する電力と熱のエクセルギーによって按分するものとする。

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