2023年4月から、バイオマス発電における燃料の調達から利用に至るライフサイクル全体のGHG排出量の抑制に向けた新制度がスタートする。このほどその新制度の方向性tと概要が明らかになった。
「持続可能性」は、あらゆる電源に求められる要素であるが、バイオマス発電はその燃料の製造や輸送が必要であるなど、他の再エネとは異なる特徴を持つものである。
このため資源エネルギー庁は2019年4月に「バイオマス持続可能性ワーキンググループ(WG)」を設置し、FIT/FIPバイオマス発電・燃料における合法性や持続可能性(環境、社会・労働、ガバナンス、食料競合)とその第三者認証の在り方について検討を行ってきた。
またバイオマス発電は、燃焼時のCO2排出はカーボンニュートラルであると国際的にも整理されているが、原料の栽培や燃料製造、輸送時等にはGHGが排出されている。このため、ライフサイクル全体を通じたGHG排出量の抑制が求められている。
同WGではこれまで、
などの検討を行ってきた。
WGの第20回会合では、2023年4月からのライフサイクルGHGに関する新制度開始に向けて、一定の方向性が示された。
ライフサイクルGHG排出量を算定するためには、その対象ガスや対象工程・排出活動、配分(アロケーション)等を定める必要がある。
WGでは、EUの制度(EU RED II)や国内のエネルギー供給構造高度化法等を参考として、表1のようにライフサイクルGHG算定式が整理された。
現時点、土地利用変化を含む炭素ストックの変化については、直接的土地利用変化のみが計上される。また輸送工程については往路だけでなく、復路便の排出も対象としており、往路と同等もしくは航海距離比率30%の計上が必要とされる。
(算定式)E = estock + ecultivate + eprocessing + etransportation + egeneration - erccs - erccr
E = 発電効率による変換前の燃料利用によるGHG総排出
e stock = 土地利用変化を含む炭素ストックの変化に伴う排出量・排出削減量
e cultivate = 栽培による排出量
e processing = 加工による排出量
e transportation = 輸送による排出量
e generation = 発電による排出量
er ccs = CO2回収・隔離による排出削減量
er ccr = CO2回収・代替利用(バイオマス起源のCO2を回収するもののみを対象とする)による排出削減量
なお熱電併給を行うバイオマス発電所については、発電だけでなく熱利用も考慮することとして、バイオマス燃料のライフサイクルGHGを、生産する電力と熱のエクセルギーによって按分するものとする。
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