ライフサイクルGHGを確認するためには、既存認証スキームを活用する方法と、FIT専用の新確認スキームを構築する方法の2つがある。
既存認証スキームを活用する場合、FIT制度においてライフサイクルGHGを確認できる認証スキームのメルクマール(ISO17065やISO14065への適合)を設定する必要がある。
WGでは、農産物の収穫に伴って生じるバイオマスについては既存認証スキーム(RSB・GGL・ISCC)を活用し、輸入木質バイオマスについては既存認証スキーム(SBP)を活用することとされた。
これに対して、国内木質バイオマスについては林野庁の「木質バイオマス証明ガイドライン」の仕組みを参考としつつ、これを改良・強化し、ライフサイクルGHGの確認手段として活用する。
また、その他のバイオマス(メタン発酵ガス、一般廃棄物、産業廃棄物、建設資材廃棄物)については、より簡便にライフサイクルGHGが基準排出量を下回ることを確認する方法を今後検討する予定としている。
新たなライフサイクルGHG基準の適用は2023年4月から開始されるが、3年間の経過措置が講じられる。
上記のとおり、現時点ではメタン発酵ガス等の「その他バイオマス」ではライフサイクルGHGの確認方法が未整備であるため、当面の制度対象は「農産物の収穫に伴って生じるバイオマス(輸入)」と、輸入木質バイオマス、国内森林に係るバイオマスに限定される。
また行政コスト抑制の観点から、一定の裾切り基準として、1MW以上(発電端)の案件のみを制度対象とする。この場合の制度カバー率は、FIT/FIP認定件数ベースで62%、設備容量ベースで99.6%と非常に高い水準である。
対象バイオマスの新規案件は、2022年度以降にFIT/FIP認定取得する時点で、発電事業者自身も含めたサプライチェーンを通じて、認証スキーム(改良木質バイオマス証明ガイドライン)に基づく認証を取得することが求められる。
また同時に、予定する燃料調達元を想定したバイオマスを、既定値もしくは個別計算によりライフサイクルGHGを算定し、これが基準値を下回ることを申告する。
発電所の運転開始後は、調達バイオマスごとに、認証スキームに基づきライフサイクルGHGが基準を下回ることを確認できる証票を保存する。
燃料がライフサイクルGHGの基準を満たすことが確認できない場合は、指導・改善命令の対象となり、改善されない場合にはFIT/FIP認定を取り消すこととする。
2022年度以降のFIT/FIP認定案件では一定のライフサイクルGHG基準への適合が義務となるのに対して、2021年度以前の認定案件では自主的な情報開示に留まる(表3参照)。
自主的な開示とはいえ、一定の共通ルールに基づくほうが便利であることから、望ましい情報開示・報告方法として、以下の様式を定めることとする。
また今後、WGの場で業界団体等に対するヒアリングを実施することにより、既認定案件の情報開示の進捗状況を確認する。
ライフサイクルGHGの算定は難解で手間が掛かると思われがちだが、諸外国では、独自の計算ツールの作成・配布やweb上でのトレーサビリティの確保などにより、事業者が効率的に業務を行える環境が整備されている。
日本でも、客観性や信頼性の確保を大前提とした、業務のデジタル化が期待される。
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