休止電源の維持による需給逼迫への対応策――新たに「予備電源制度」を創設へエネルギー管理(1/5 ページ)

電力需給逼迫への対応策の一つとして、火力発電などの休止電源を活用するための新たな仕組みの検討が始まっている。資源エネルギー庁では「予備電源制度」として新たに制度化する方針だ。

» 2023年02月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2016年の電力小売全面自由化以降、国内の火力発電所の廃止が増加している。旧一般電気事業者等(JERA、電源開発を含む)の火力電源の廃止発電所の設備容量合計はLNGと石油等を中心に、毎年200〜700万kWに上る。

図1.火力発電所の廃止実績 出所:電力・ガス基本政策小委員会

 また近年、夏季・冬季といった高需要期には、安定供給に必要とされる予備率を下回るエリアが複数表れており、追加の供給力公募(kW公募)の実施が恒例化している。このような需給逼迫への対応策の一つとして、休止電源を活用するための新たな仕組みの検討が資源エネルギー庁の「制度検討作業部会」で進められてきた。

 これは「予備電源制度」と呼ばれており、制度設計の主な論点は以下のとおりである。

容量市場との関係性、予備電源の位置付け

 供給力kW確保の仕組みとしては、2024年度から容量市場が運用開始される。容量市場では、厳気象や設備(電源・送電線等)事故発生などの一定の稀頻度事象にも対応できる供給力が確保されるが、あらゆる事態を想定した完全な供給力を容量市場だけで調達することは費用が過大となってしまうことから、容量市場では一定のリスクを許容している。例えば、確率論的に予測が困難な大規模な震災等は、容量市場ではカバーされていない。

図2.容量市場による調達量と予備電源の関係 出所:電力広域的運営推進機関

 大震災のように、事前想定が難しく非常に稀頻度で発生する事象に備える仕組みが「予備電源」制度である。

 また、このために電源を短期間で新設することは現実的ではないため、既存の休止電源を予備電源として維持したうえで、これらを再稼働させることが想定される。

 休止電源を再稼働させるには、大規模な設備修繕や日常的なメンテナンス費用等が発生することとなる。よって予備電源制度では、この一定の費用を対象電源に対して支払うこととする。

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