電力の安定供給と経済性を両立、kWhとΔkWを同時約定させる「同時市場」を導入へエネルギー管理(3/5 ページ)

» 2023年02月13日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

同時市場の約定フローは3段階に

 同時市場においては、入札された電源の3-Part情報等を元に、調整力の必要量も考慮しながら、電源の起動停止計画および出力計画を策定することが必要となる。

 なお、いわゆるセルフスケジュール電源(原子力や水力等の長期固定電源等)の取り扱いについては後述する。

 一定の前提条件を置いた場合の同時市場の約定フローは、①電源起動停止判断→②kWh確保→③ΔkW確保、となり、その概要は以下のようなものである。

①電源の起動(停止)判断

TSO予測需要および調整力必要量に対して、起動費とkWh費用等の合計が最小になるよう、地域間連系線制約等を考慮して広域エリアで電源起動(停止)を判断する。

図2.起動停止判断のイメージ 出所:あるべき市場作業部会

 起動停止判断にあたり、起動済み電源であっても常に一定の起動費を織り込んで計算するならば、変動費が安かったとしても起動費の高い電源は選択されにくくなる。

 このため、前日に稼働しており当日も継続して稼働する電源は、起動費をゼロと捉え、起動停止判断を行うこととする。

②kWh取引

 ①の起動停止判断にてメリットオーダーで選定された電源を対象に、小売電気事業者の入札情報を元に安価な電源から出力を仮決定する。

図3.出力の仮決定のイメージ 出所:あるべき市場作業部会

③ΔkW取引(ΔkW-I)

 ②のkWh取引結果から電源の持替などを行い、ΔkW-I(前日段階での不足インバランス分)を確保する。ΔkW-IはkWhとして発動されることを前提に、kWh単価の安い電源を優先的に割り当てる。

次いで、ΔkW-II(一次調整力〜三次調整力①)の供出可能量および価格を設定し、複合約定ロジックにてΔkW-IIを確保する。

最後に、ΔkW-I・ΔkW-IIを確保した状態から、ΔkW-III(三次調整力②)を確保する。

図4.ΔkW-I確保のイメージ 出所:あるべき市場作業部会

 なおΔkWの確保については、高速なガバナフリー領域やLFC(負荷周波数制御)領域などそれぞれの必要量に対して、各発電機の供出可能な量を考慮の上、最経済となるように組み合わせることが重要となる。

 また、調整力の供出量は発電機の出力帯によっても変化するため、それらの特性も勘案の上、ΔkWを確保していくこととなる。

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