電力の安定供給と経済性を両立、kWhとΔkWを同時約定させる「同時市場」を導入へエネルギー管理(4/5 ページ)

» 2023年02月13日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

約定価格の決定方法は?

 上述のとおり3-Part方式を採る同時市場では、電源は限界費用のほか起動費や最低出力費用も入札情報として登録するため、需要量の大小により、約定電源等のラインアップ自体が変化する可能性がある。

 このため、小売電気事業者による買い入札価格と量を踏まえて、需要Pを少しずつずらしながら、電源ラインアップの計算と限界価格の計算を何度も繰り返し行うことで、供給曲線を作成する方法が考えられる。

図5.供給曲線の作成方法 出所:あるべき市場作業部会

 しかしながら、この方法による場合、繰り返し計算による計算負荷が高いなど、実現性に課題があることも想定される。このため代替策として、あらかじめ一定の需要を想定して供給曲線の作成を簡易的に行う方法についても検討を継続することとした。

電源等情報の一元的な把握・管理

 前日同時市場では、売り手・買い手の入札だけでなく、TSOによる想定需要や日本全体の電源の起動状況等も踏まえて約定される。

 このため市場管理者は、前日段階での全体の需給状況の把握が必要となる。

 現在TSOは、調整電源等(電源I、II、I')に対して起動・停止の指令が可能であるものの、電気事業者の発電設備出力合計に占める電源I・IIの割合は約54%に留まっている。(2021年度)

 今後、電源情報の一元的な把握・管理の観点から、前日同時市場を通じて必要な情報を把握する仕組みとするため、具体的な方法を検討予定である。

表2.一送が把握している電源情報と起動可否 出所:送配電網協議会

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