地球環境への悪影響が指摘されているフロン類。これまで国内外で排出量の抑制に向けた各種の施策が進められているが、フロン使用機器の廃棄時における回収率の低さや、仕様時の漏洩といった課題が残っている。こうしたフロン類の排出対策の現況を解説する。
フロン類とはフルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称であり、CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)を、フロン排出抑制法ではフロン類と呼んでいる。
フロン類は、不燃性、化学的に安定、人体に毒性が小さいなどの特徴を有するものが多いことから、エアコンや冷蔵庫などの冷媒用途をはじめ、断熱材等の発泡用途、半導体や精密部品の洗浄剤、エアゾールなどさまざまな用途に活用されてきた。
しかしながら、フロン類によるオゾン層の破壊や地球温暖化といった地球環境への影響が明らかにされたため、より影響の少ないフロン類や他の物質への転換が、可能な分野から進められてきた。
オゾン層は上空の成層圏にあり、有害な紫外線を吸収して地球上の生物を守っているが、フロン類のうち塩素を含むCFCとHCFCは、オゾン層を破壊するという性質を有する。
このため国際的な取り組みとして、1985年のウィーン条約採択、1987年のモントリオール議定書採択により、これら「特定フロン」の生産量・消費量は段階的な規制が進められてきた。日本では1988年制定の「オゾン層保護法」により、特定フロンの製造・輸入が規制されている(2019年から代替フロンも対象)。
国際的な特定フロンの削減が進んだ結果、1990年代後半以降、南極のオゾンホールの長期的な拡大傾向はみられなくなったものの、1980年代の規模に戻るのは2060年代頃と予測されている。
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