使用時の漏洩抑制や機器廃棄時の回収率の向上に努めることは大前提として、より上流からの対策として、GWP(温室効果)の小さい「グリーンな冷媒」の開発が進められている。モントリオール議定書キガリ改正の最終削減目標を達成するためには、GWP10以下の冷媒開発・上市が必要とされている。
自然界に存在するCO2やアンモニア、水、空気などは自然冷媒とも呼ばれ、特定の分野では実際に冷媒として使用されている。また分野によってはグリーン冷媒への切り替えがすでに実現しており、例えば家庭用冷蔵庫では、フロン類からイソブタン(炭化水素)への切り替えが完了している。
他方、業務用エアコン等の分野では「完璧な代替物質」が存在するとは考えられておらず、可燃性や毒性などの安全性での課題や、省エネ性の低下といった課題も踏まえつつ、全体のメリット・デメリットのバランスを考慮した妥協策が必要と考えられている。
世界各国の経済成長や温暖化の進行等により、世界全体のエアコン導入台数(ストック)は、2050年に50億台を超えると予測されている。しかしながら、現在100ヶ国以上の国がフロン類対策に関する目標を持っていない。
モントリオール議定書キガリ改正に基づく代替フロンの製造規制を実施したとしても、市中ストックに対する回収・処理等の追加的措置を講じなければ、HFCの排出量は2030年頃に約20億トン-CO2まで増加すると予測されている。
このため、日本の主導により、「フルオロカーボン・イニシアティブ」を2019年に設立し、フロン類のライフサイクルマネジメントの国際的な普及を進めている。また、タイとベトナムにおいて、二国間クレジット制度(JCM)による、フロン類の回収破壊プロジェクトを実施中である。
フロン類排出抑制対策は、現時点、事業者においても認識が十分とは言えない状態であるが、空調・冷蔵冷凍機器は、誰もが毎日使用する製品であるため、その冷媒・フロン類に関して、市民に対する一層の周知や普及啓発が求められる。
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