大気中のCO2を除去する「ネガティブエミッション技術(NETs)」。脱炭素化に貢献する技術の一つとして国際的に普及を目指す動きが広がっており、日本でもネガティブエミッション市場創出に向けた方針の検討が始まった。
ネガティブエミッション技術(NETs)とは、大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することで大気中のCO2を除去 (CDR:Carbon Dioxide Removal)することに資する技術の総称である。
IPCC第6次評価報告書においては、CDRは排出削減を代替することはできないものの、短期的にはネット排出削減の強化、中長期的にはネットゼロやネットマイナス達成のための手法としての補完的な役割が認められており、カーボンニュートラル達成には世界全体で、年間約2〜10Gt(20〜100億トン)の「除去」が必要と試算されている。
このため、経済産業省では「ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会」を設置し、国内外のNETsの動向を整理し、ネガティブエミッション市場創出に向けた方針を検討することとした。
地球レベルでの炭素循環からCO2を固定化・除去するネガティブエミッション技術(NETs)にはさまざまなものがあるが、その固定化・除去期間は100年以上の長期間であることが重要とされている。
これら主要なネガティブエミッション技術(NETs)を、TRL(技術成熟度)、除去コスト見通し(2050年)の2軸でマッピングし、除去ポテンシャル(2050年)を円の大きさで表したものが、図2である。
ただし将来コストについては、試算の対象国や、試算を行う研究機関によって大きな幅があるため、技術間の相対的・平均的な金額であることに留意が必要である。
また、例えばDACCSでは化学吸収や化学吸着のように商用化が進んだCO2回収技術がある一方、膜分離やパッシブ方式などTRLの低い技術があるなど、一つのネガティブエミッション技術分野にもさまざまな個別技術が存在する。
図2では、すでに商用化された技術かつ低廉なコストで、一定のまとまった除去量が期待される植林等がある一方、海洋CDRの多くはまだ基礎研究段階にあることが分かる。
工学プロセスを活用するDACCS/BECCSは、CO2除去効果が明確となる長所があるものの、今後のコストダウンが必要とされている。
TRLや除去コスト、除去ポテンシャルによる評価のほかに、研究開発力の国際比較、所要陸面積(t/m2)、除去量確認の容易さ、日本での地理的・気候的優劣(国内資源制約)、社会・環境影響、各国の取組の状況、コベネフィットの観点から、ネガティブエミッション技術(NETs)が比較検討されている。
コベネフィットとは、その技術の導入によって得られる生物多様性の増加や環境保護など、CO2除去以外の効果のことである。
自然プロセスを利用するネガティブエミッション技術では、農業や水産業など主目的があり、副産物として炭素除去(CDR)が行われるケースもある。
また、NETsで想定される主な社会・環境影響(好影響・悪影響)としては、表2のものが想定されている。
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