大気中のCO2を除去する「ネガティブエミッション」、日本での市場創出に向けた検討がスタート法制度・規制(2/4 ページ)

» 2023年06月09日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

諸外国における炭素除去(CDR)支援策の動向

 近年、米国や欧州では、炭素除去(CDR)に関する政策方針や支援策が相次いで公表されている。

 米国では、「Carbon Negative Shot」を立ち上げ、CO2の回収と貯留の両方を$100未満/トンにコスト削減することや、ライフサイクル排出量の確実な算定、地中での安定的な貯留とモニタリング・報告・検証、ギガトン規模でのCO2除去などの目標が掲げられている。

 この実現を支援するため、インフレ削減法(IRA)において、既存のCCS税額控除を拡大し、DACでは1トン当たり最大180ドルを税額控除することとした。

 また、インフラ投資法に基づき35億ドルを投資し、年間100万トン以上のCO2の回収・貯留・製品転換ポテンシャルのある技術を実証・商用化する「DAC Hub」を国内に4つ設置するプログラム等を公表している。

表3.米国インフレ抑制法におけるDACCSに対する税額控除 出典:JOGMEC

 欧州では、総額€100億(2021年-2030年)の「Innovation Fund」や、総額€955億(2021年-2027年)の「Horizon Europe」、総額€28億(2021年-2024年)の「LIFE program」等の各種資金プログラムの中で、多様な炭素除去(CDR)技術の開発・実装を支援している。

 また欧州委員会は、炭素除去認証枠組に関する規則案「EU Carbon Removal Certification Framework」や、炭素除去の質と比較可能性を確保するための一連の基準を提案している。

ネガティブエミッション技術の測定・報告・検証(MRV)

表4.ネガティブエミッション技術のMRV検討状況 出典:ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会

 国家インベントリへの登録やカーボンクレジットの創出などにおいて、CO2の排出や除去を適切に測定・報告・検証(Measurement, Reporting and Verification:MRV)するための手法が必要となる。

 パリ協定では、NDC(国が決定する貢献)の計算において、「締約国は、IPCCが評価し、協定の締約国会合が採択した方法論と共通のメトリクス(測定基準)に従って、人為的な排出と除去の計算を行う」としているが、DACCSのように、IPCCの方法論が存在しない分野も複数ある。このため、今後、科学的な根拠を積み上げることが重要とされる。

 また、民間イニシアティブの「GHGプロトコル」では、炭素除去(CDR)に関する「土地セクター・除去ガイダンス」を2023年中に公表予定である。

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