大型化が進む洋上風力発電、新たな環境アセスメント制度を検討へ法制度・規制(1/5 ページ)

国内でも導入に向けた動きが加速している洋上風力発電。設置される風車の大型化とともに大規模化が進むなか、政府では新たな環境アセスメント制度の創設に向けた検討を進めている。現行制度の課題と、今後の見通しをまとめた。

» 2023年06月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 洋上風力発電は、今後のコスト低減が可能であるとともに、経済波及効果が大きいことから、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、さらなる大量導入が期待されている。

 風力発電機は大型化が進んでおり、欧州では洋上で10MW級の風車の商用運転が開始されており、国内でも秋田県や千葉県の3海域では、13MWの風車の導入が予定されている。

図1.大型化が進む風車の高さ 出典:環境省検討会

 再エネ電源の導入に際しては、環境への適正な配慮を確保しつつ、地域との共生を図ることが大前提となる。

 洋上風力発電の促進制度である「再エネ海域利用法」(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)では、国(経済産業省、国土交通省)が領海内において、洋上風力発電事業の適地となる促進区域を指定するに当たり、関係者による地域協議会において合意形成が図られている。

 他方、再エネ海域利用法は、環境影響評価法や電気事業法とは独立した制度であるため、従前の環境影響評価(環境アセスメント)制度が並行して適用され、公募選定された事業者は別途、法に基づく環境アセスメントを実施する必要があるなど、運用上の課題が指摘されてきた。

図2.再エネ海域利用法 洋上風力発電の手続きフロー 出典:環境省検討会

 このため環境省は、2022年度に「洋上風力発電の環境影響評価制度の諸課題に関する検討会」を設置し、新たな環境アセスメント制度の検討の方向性を取りまとめた。

 これを踏まえ、2023年度には「洋上風力発電の環境影響評価制度の最適な在り方に関する検討会」が設置され、洋上風力発電の新たな環境アセスの在り方や、再エネ海域利用法との連携に関する議論が開始された。

洋上風力発電による自然環境への影響

 洋上風力発電は陸上における再エネ導入と比べて、動植物などへのダメージは相対的に小さいものの、以下のような直接的・間接的な影響が海上や海面下において生じ得る。

鳥類への影響

 直接的な影響としては、タービンブレードとの衝突(いわゆるバードストライク)があるほか、間接的な影響としては、生息地の移動・採餌場所の変化などが生じ得る。また、風車が鳥類の渡りや採餌のための移動を阻害し、経路変更を起こし得る。

魚類などへの影響

 無脊椎動物が風車基礎部分に定着することや、風車周辺でのトロール漁などの漁業活動が制限されることにより、ウィンドファーム周辺では、底生の動物など生物多様性が向上したプラス面での影響も報告されている。

海生哺乳類への影響

 アザラシやイルカ等の海生哺乳類は、風車建設の工事騒音を避けるため、生息地が変化する。他方、魚類の増加により餌の利用可能性が高まることで、海生哺乳類が誘引されるなど、プラスの影響も生じ得る。

陸上での植生への影響

 洋上風力からの送電ケーブルを陸揚げする海岸で、海浜植生への影響が生じ得る。

 以上のように、洋上風力発電の自然環境への影響は、ネガティブ・中立的・ポジティブなものなどさまざまなものが想定されるが、現時点、十分な知見があるわけではない。そのため複数の風力発電事業による累積的な影響が生じることを念頭に、なるべく長期的に、モニタリングを行うことが求められる。

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