上述のとおり、再エネ海域利用法とアセス法は独立した制度であるため、再エネ海域利用法に基づく区域選定を進める過程において、国は環境配慮のための検討を行う一方で、洋上風力発電事業者はアセス法等に基づき、事業実施区域の複数案について検討を行うことにより、検討内容の重複が生じている。
また、同一エリアにおいて複数事業者による環境アセス手続きが乱立することにより、地域住民や自治体など関係各者に大きな負担が生じている。
事業者は、自らが選定された後、環境アセス制度に基づき、現地調査を経て、「準備書」、「評価書」手続を実施するため、運転開始までのリードタイム長期化のおそれも生じている。
ただし実際には、事業者選定前の段階から、非選定となるリスクを抱えながら、初期段階の環境アセス手続きを開始する事業者が増加していることから、環境アセスの「重複」「乱立」に拍車を掛けている。
このような課題を解決するための仕組みが、洋上風力発電に関する「セントラル方式」であり、環境アセスメントのほか、風況・海底地盤等のサイト調査、系統接続の確保や洋上風力発電事業の実施区域の指定や発電事業者の公募、地域調整や漁業実態調査に関して、国や地方公共団体の主導的な関与により、効率的な案件形成を目指すものとして、その具体化が検討されている。
欧州における洋上風力発電では、EU指令に基づいて、戦略的環境アセスメント(SEA)や環境アセス(EIA)、モニタリングが実施されているが、EIA・モニタリングの実施主体(範囲)は国によって異なる。特にオランダやデンマークでは、政府が実施主体となる範囲が大きく、日本版セントラル方式の検討において参照されている。
現在、オランダでは、MSP(Marine Spatial Planning:海洋空間計画)、SEA、区域選定、EIA、モニタリングのいずれも実施主体は国であり、国が主導する長期間の研究プログラムで収集したモニタリングデータや研究結果は、洋上風力発電サイトの検討・指定・決定、環境アセスフレームワークの更新、事業計画の最適化(緩和策等)等に活用されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.