大手電力会社の卸取引は適切か――2023年度の評価結果が公表電力供給サービス(1/5 ページ)

発送電分離が行われた電力自由化以降、健全な市場環境の維持においては、旧一電の電力小売部門による適切な卸取引の遂行が重要なポイントとなる。このほど、2023年度通年の相対契約などについて、内外無差別な卸売が実施されているかの評価が行われた。

» 2023年07月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 電気事業において、発電・小売は自由化されたものの、現在も電源の多くは旧一般電気事業者(旧一電)が保有している。仮に旧一電が電力の卸売において、社外・グループ外の小売電気事業者と比べ、自社の小売部門にのみ有利な条件で卸売を行うならば、旧一電小売部門による不当な廉売行為等、小売市場における適正な競争を歪曲する行為が生じること(不当な内部補助)が懸念される。

 このため旧一電各社において、中長期的な観点を含め、発電から得られる利潤を最大化するという考え方に基づき、社内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に卸売を行うこと等のコミットメントの履行とその具体的方策の運用が2021年度より開始された。

図1.発電・小売間の電力卸取引 出典:制度設計専門会合

 電力・ガス取引監視等委員会(監視委)は、コミットメントの履行状況を確認しており、定期的に「制度設計専門会合」にその確認結果を報告している。今回、2023年度通年の相対契約の交渉・契約が完了したため、内外無差別な卸売が実施されているか、評価が行われた。

旧一電の供給力の行き先の推移

 2023年度の旧一電合計の供給力は、約1.3億kW(8月見積値)、7,440万kWh(年間見積)となっている。kWとkWhで若干比率が異なるものの、全体の1割弱を社外・グループ外向けに卸供給している。

図2.旧一電の供給力の行き先別内訳推移(kWh) 出典:制度設計専門会合

 kWhでは2023年度は前年度と比べ、社内・グループ内向けはやや増加(+3%)する一方、社外・グループ外向け(相対卸、常時バックアップ、ベースロード市場)は昨年度実績を下回る見込み(−13%)となっている。これは、東電EPが自社需要の増加(戻り需要)を背景に、相対卸を大幅に減少させていることが主な原因とされている。

 また、社外・グループ外向け取引(kWh)のうち、常時バックアップ(+6%)とベースロード(+28%)は増加している一方、相対卸は減少(−24%)している。

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