こうしたデータの存在は、栽培する作物や地域の気象条件等に適した設備設計を行えば、営農型太陽光発電において必要な作物の収穫を得られるということを明らかにするものです。
そうであれば、「太陽光パネルの下で作物が育つのか」「農作業に支障にならないか」といった10年続く議論を脱却し、「営農型太陽光発電をどのように農業・農村で役立てるか」という議論に軸足を移していくべきです。
以前(第58回)の記事でも整理した通り、営農型太陽光発電/ソーラーシェアリングは農業・農村の抱える問題を一気に解決するものではありませんが、農業者の所得を向上させ、農業・農村のエネルギー転換によって持続可能な社会作りに貢献し、気候変動への適応や遊休農地再生などさまざまな取り組みにつなげることが出来ます。
営農に対する意欲の低い事例を減らしていくことは必要ですが、それは営農型太陽光発電を普及させていくという基本的な姿勢を示した上でのことでなければ、非常に後ろ向きの議論ばかりがなされてしまい、結果として優れた取り組みの足を引っ張ることになりかねません。データの読み方一つを誤るだけでも歩む道を踏み外すことにつながりかねないことに気を配り、日本と食料安全保障とエネルギー安全保障という大きな目線を踏まえた政策議論を進めていくべきです。
そもそも「営農型太陽光発電」とは何なのか? 改めてその定義と意義を考える
規制は強まるのか? 営農型太陽光発電をめぐる国内の規制動向
営農型太陽光の“農地転用申請数の問題視”に感じる、制度議論と現場の乖離Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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