バイオマス燃料のGHG情報の開示方法を整備へ、第三者認証の取得は一部で課題も法制度・規制(2/4 ページ)

» 2023年09月29日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

ライフサイクルGHGの自主的な情報公開

 2021年度以前の認定案件については、安定調達の観点から、すでに燃料の長期契約やファイナンスが組まれていること等から、義務的なライフサイクルGHG基準は適用されない。

 ただし、最大限の排出削減に努めることを求め、当該取組内容を自社のホームページ等で情報公開し、国への報告を求めるものとした。なお、2021年度までの既認定案件が燃料の計画変更の認定を受ける場合には、使用する全ての燃料についてライフサイクルGHG排出量の基準適用となる。

 また2022年度以降の認定案件についても、透明性確保の観点から、同様に情報公開・報告を求めることとした。これらは、「事業計画策定ガイドライン」において、2021年度までの既認定案件及び2022年度以降の認定案件の双方を対象に、推奨事項(努力義務)として定めている。

 ライフサイクルGHGに係る自主的取組の情報公開の様式イメージは表2のとおりであり、各事業者は発電所ごとに燃料区分、燃料名、ライフサイクルGHG算定値等の記載を求める。なお、別紙には工程別のライフサイクルGHG算定値を記載するものとする。当該情報公開の頻度は年1度として、前年度(4月〜翌年3月)の実績を、翌年度に発電事業者自身のホームページ等において公開する。

表2.ライフサイクルGHGに係る自主的取組の情報公開様式イメージ 出典:バイオマス持続可能性WG

 また表2の右列にあるとおり、農産物の収穫に伴って生じるバイオマス燃料については、第三者認証スキーム名称や燃料使用量・識別番号についても情報公開を求める。この持続可能性基準については、推奨事項(努力義務)ではなく、順守事項(義務)である。

 同じく、ライフサイクルGHG基準の適用対象となる発電事業者に対しては、ライフサイクルGHGの確認方法として、取得した第三者認証スキーム等の名称について、自社のホームページ等で情報公開することを順守事項(義務)とする。

表3.ライフサイクルGHG基準の適用対象となる発電事業者に求める情報公開 出典:バイオマス持続可能性WG

ライフサイクルGHGの国への報告方法

 ライフサイクルGHGに係る自主的取組については、自社のホームページ等で情報公開するだけでなく、国への報告が推奨事項とされている。国への報告方法(ルート)としては、国への直接報告のほか、業界団体を経由した報告が想定される。

 類似制度を確認すると、報告義務とされている制度では、各事業者から国への直接報告としているのに対して、自主的取組とされている制度では、業界団体が各事業者の排出量や削減見通しを集計し、審議会にてフォローアップを実施するものとなっている。

表4.類似制度における報告方法(ルート) 出典:バイオマス持続可能性WG

 WGでは、ライフサイクルGHG排出削減の努力を促していくためには、各事業者における取組の透明性を高めるとともに、優良事例の共有など業界団体としての役割を発揮し、業界全体として取組の底上げを図っていく観点も重要であるとして、業界団体を経由した報告ルートを採用することとした。

 ただしこの方法(ルート)の場合、業界団体等に参加していない事業者が漏れることとなる。WG事務局がFIT認定情報をもとに調査したところ、業界団体等によるカバー率は出力(kW)ベースで72.5%であった。なお、業界団体には、大手の燃料調達事業者も所属しており、その取引先も含めると、より広くカバーできる可能性があり、まずは業界団体等での参加率を上げていくことが効果的であると考えられる。

表5.業界団体等によるライフサイクルGHGに係る自主的取組のカバー率 出典:バイオマス持続可能性WG

 今後、発電事業者は自ら情報公開した上で、業界団体等を通じて国へ報告を行い、業界団体等が取りまとめた内容や各事業者から報告された情報一覧等について、WG等において毎年フォローアップを実施する予定としている。

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