日本版「同時市場」導入に向けた重要論点、「調整力」の定義を見直しへ法制度・規制(2/4 ページ)

» 2023年10月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

時間内変動に対応する調整力

 電力の需要と供給、およびその誤差は実需給断面において時々刻々と変動しており、このような1コマ内の時間内変動・誤差のうち、極短周期成分(サイクリック)に対しては一次調整力、短周期成分(フリンジ)に対しては二次①調整力にて対応することとしている。

 フリンジ分は、数分〜十数分程度の周期の、需要予測が困難な負荷変動や需給ミスマッチにより発生する変動であり、一般送配電事業者からのLFC(二次①)信号によって、電源の出力調整を行うことで、負荷追従および周波数調整を行っている。

 また、サイクリック分はフリンジ分より更に周期の短い、数秒〜数分程度の周期の負荷変動であり、電源のGF機能(一次)により、送配電事業者からの信号無しで、電源の自端で出力を自動制御している。

図2.短周期・極短周期成分に対応する調整力 出典:調整力作業会

 今後の同時市場では、随時、SCUC(系統制約を考慮した上で、最経済となる起動停止計画)により、電源出力の補整を行うことになるが、時間内変動の発生は不可避であるため、同時市場の開始後も、現在と同様に、一次・二次①の必要性は変わらないと考えられる。

予測誤差に対応する調整力

 現行制度では、GC(実需給の1時間前)までに計画(予測値)を確定する必要があるため、GCから実需給までの1時間の間に計画値と需要実績に差が生じ、これにより、長周期成分(図2のサステンド分)の予測誤差が生じることとなる。

 この長周期成分(サステンド分)の予測誤差に対しては、二次②調整力・三次①調整力(いずれもEDC)で対応しており、コマ間の差に対応する二次②は比較的応動の早い調整力、コマ間で連続する量に対応する三次①は比較的応動の遅い調整力となっている。

図3.予測誤差に対応する調整力 出典:調整力作業会

 将来的に時間前市場において同時市場を導入することにより、前日市場以降も継続的にSCUCを行うことにより、送配電事業者(TSO)による需要・再エネ予測に合わせ続けることが可能となり、調整力の必要量を減らせると考えられる。

 他方、ここでは日本の火力電源の起動特性等も踏まえる必要があることも指摘されている。欧米では起動時間が短い(30分〜2時間)ガスタービン発電機が多いのに対して、日本では起動時間が長い電源も多く存在する。

このため、随時、SCUCを行うとしても、電源の起動が間に合わないことに対応するため、GC以前の予測誤差に対応する「予備力」の確保も一定程度、必要と考えられる。

表3.日本の発電機の起動特性 出典:制度設計専門会合

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