改正省エネ法を契機に変わる企業対応、省エネ・非化石転換に関する新制度の動向小売事業者に関する情報開示からDR促進制度の動向まで(3/5 ページ)

» 2024年03月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

エネルギー消費機器のDR対応に向けた措置

 改正省エネ法では「電気の需要の最適化」を目指して、エネルギー消費機器のDR(デマンドレスポンス)対応を進めることとした。DRには、「上げDR」「下げDR」の両方が想定されている。

 これまで多くのDRは人手を介するものであり、これを実施する手間や参加率の低さ、確実性などが課題とされてきた。このため、エネルギー消費機器の遠隔制御や自動制御といったDRの高度化を実現するため、機器のDR対応(DR ready化)が検討されている。

 米国や英国では、配電系統の混雑回避や調整力確保のため、一部の機器にDRのための通信機能の具備を求めており、外部制御機能やセキュリティについても要件を定めている。

 よって、資源エネルギー庁では、諸外国の事例を参考としつつ、機器のDR ready化に向けた通信接続機能や外部制御機能、セキュリティ等について検討するため、勉強会を設置することとした。

表4.機器のDR readyに関する米英の状況 出典:省エネルギー小委員会

ヒートポンプ給湯機のDR対応

 電気式ヒートポンプ給湯機(エコキュート)は、家庭で大きなエネルギー(電力量・kWh)を消費する機器であるため、旧省エネ法においてもトップランナー制度に基づく省エネ目標基準が設定されてきた。ただし現時点、DRに向けた目標基準はなく、ヒートポンプ給湯機の規格自体も、DRに対応していない。

 そこで、日本冷凍空調工業会(日冷工)は、家庭用ヒートポンプ給湯機技術専門委員会の下に「DR対応検討WG」を設置し、エコキュートのDR対応について検討を開始した。日冷工WGでは、DR対応機器として「自律制御型DR」、「外部指令応答型DR」の2つのタイプ(ステップ)を想定し、給湯機器メーカーや小売電気事業者に求められる仕様、契約要件を表5のように整理している。

表5.DRで求められる機器仕様、契約要件 出典:日本冷凍空調工業会

 従来、エコキュートは夜間の余剰電力を活用する「夜間蓄熱機器」として開発され、対応する料金メニューも、夜間蓄熱(夜蓄)要件があるものに限定されてきた。夜蓄要件とは、小売電気事業者が特定の料金メニューを契約する条件として、夜間蓄熱式機器を使用し、主に夜間に沸き上げを行う要件であり、これにより、昼間への蓄熱シフトに制約が生じていた。

 よって、太陽光発電の余剰電力対策としてエコキュートで昼間に「上げDR」を行うためには、電力小売の夜蓄要件の適合を確認することが必要となる。そこで日冷工WGでは、以下の2点を確認した。給湯機器メーカー・電力会社間で確認した。これにより、夜蓄要件については課題解消済みと整理された。

  1. 従来型料金メニューに加入している需要家が、ヒートポンプ給湯機で昼間沸き上げを行う「上げDR」を行う場合であっても、主たる沸き上げは夜間に行われるため、夜蓄要件を逸脱しないこと
  2. 工場出荷時に「主たる沸き上げを夜間とする運転制御ソフト(夜蓄要件を満たす)」と「主たる沸き上げが夜間に限らない運転制御ソフト(夜蓄要件を満たさない)」の両方を搭載した機器であれば、夜蓄要件に該当する機器として認められること

 なお、最近では九州電力の「おひさま昼トクプラン」のように、昼間にエコキュートを沸き上げることを想定し、元々、夜蓄要件の無い料金プランも登場しつつある。

図2.九州電力「おひさま昼トクプラン」料金単価イメージ 出典:九州電力

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