改正省エネ法では「電気の需要の最適化」を目指して、エネルギー消費機器のDR(デマンドレスポンス)対応を進めることとした。DRには、「上げDR」「下げDR」の両方が想定されている。
これまで多くのDRは人手を介するものであり、これを実施する手間や参加率の低さ、確実性などが課題とされてきた。このため、エネルギー消費機器の遠隔制御や自動制御といったDRの高度化を実現するため、機器のDR対応(DR ready化)が検討されている。
米国や英国では、配電系統の混雑回避や調整力確保のため、一部の機器にDRのための通信機能の具備を求めており、外部制御機能やセキュリティについても要件を定めている。
よって、資源エネルギー庁では、諸外国の事例を参考としつつ、機器のDR ready化に向けた通信接続機能や外部制御機能、セキュリティ等について検討するため、勉強会を設置することとした。
電気式ヒートポンプ給湯機(エコキュート)は、家庭で大きなエネルギー(電力量・kWh)を消費する機器であるため、旧省エネ法においてもトップランナー制度に基づく省エネ目標基準が設定されてきた。ただし現時点、DRに向けた目標基準はなく、ヒートポンプ給湯機の規格自体も、DRに対応していない。
そこで、日本冷凍空調工業会(日冷工)は、家庭用ヒートポンプ給湯機技術専門委員会の下に「DR対応検討WG」を設置し、エコキュートのDR対応について検討を開始した。日冷工WGでは、DR対応機器として「自律制御型DR」、「外部指令応答型DR」の2つのタイプ(ステップ)を想定し、給湯機器メーカーや小売電気事業者に求められる仕様、契約要件を表5のように整理している。
従来、エコキュートは夜間の余剰電力を活用する「夜間蓄熱機器」として開発され、対応する料金メニューも、夜間蓄熱(夜蓄)要件があるものに限定されてきた。夜蓄要件とは、小売電気事業者が特定の料金メニューを契約する条件として、夜間蓄熱式機器を使用し、主に夜間に沸き上げを行う要件であり、これにより、昼間への蓄熱シフトに制約が生じていた。
よって、太陽光発電の余剰電力対策としてエコキュートで昼間に「上げDR」を行うためには、電力小売の夜蓄要件の適合を確認することが必要となる。そこで日冷工WGでは、以下の2点を確認した。給湯機器メーカー・電力会社間で確認した。これにより、夜蓄要件については課題解消済みと整理された。
なお、最近では九州電力の「おひさま昼トクプラン」のように、昼間にエコキュートを沸き上げることを想定し、元々、夜蓄要件の無い料金プランも登場しつつある。
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