「PV OUTLOOK 2050」を読んで考える――営農型太陽光発電の現在地と持つべき将来像ソーラーシェアリング入門(66)(2/3 ページ)

» 2024年07月11日 07時00分 公開

導入ポテンシャルにおける農地の評価

 では、今回のPV OUTLOOKにおける太陽光発電の導入ポテンシャル分析結果で、農地はどのように評価されているのでしょうか。下記が導入ポテンシャル分析結果をまとめたページです。

太陽光発電の導入ポテンシャルの分析結果 出典:JPEA

 ここでは「農業関連」として、農地利用における立地を耕作地・荒廃農地・その他農地の3つに分類しており、それぞれ1,276GWdc・286GWdc・30GWdcと算定されています。ここで気になるのは「山林等での新規開発はポテンシャルから除外」と明示されているものの、「山林化した農地」は荒廃農地から除外して算定しているのかどうかです。一見、平地の雑木林や斜面地で山林のように見えるところが、実は地目が農地で「荒廃農地」だったということは珍しくありませんから、山林等を除外するというならそうした農地も除外されていなければなりません。

 こうした導入ポテンシャル分析結果から、実際の導入に向けた各種制約条件などを考慮して、下記のような導入見通し分析結果(ACベース)が提示されています。ポテンシャルがDCで分析結果はACなのでややこしいですが、農業関連の立地における導入量は少なくとも2030年時点で20.9GWac、2050年では106.5GWacとなっています。2050年時点の太陽光発電全体の目標値は400GWac/529GWdcとされているので、そのAC/DC比率で換算すると農業関連は約140GWdc程度になるでしょう。

太陽光発電の導入見通しの分析結果(ACベース) 出典:JPEA

 従って、今回のPV OUTLOOKでは、2050年時点で国内の太陽光発電の26.5%程度が農地に設置されると想定したことになります。ちなみに前回のPV OUTLOOKでは25.2%でしたので、わずかばかり全体に占める割合は上昇しています。

垂直設置の導入想定と農地に対する適用

 今回のPV OUTLOOKが暫定版の時点と大きく異なるのは、太陽光発電の垂直設置に対してかなり重点を置いている印象を受けることです。下記が、垂直設置の導入量について低位・高位ケースを想定したデータがまとめられているページですが、低位ケースでは2050年導入量の9.8%、高位ケースでは23.1%が垂直設置によって占められるとしています。また、高位ケースでは「2030年以降の非住宅建物・地上設置への新規導入分のうち50%が垂直設置であると想定する」となっていますので、農業関連でも垂直設置が大きく進む想定となっています。

垂直設置タイプの太陽光発電の導入見通し 出典:JPEA

 営農型太陽光発電における垂直設置の適否は別の機会にまとめようと思いますが、今回のPV OUTLOOKでの整理にある通り、太陽光発電の垂直設置はBIPVも含めて「太陽光パネルの設置手法の一つ」としての技術的な評価及び規格化等を図り、その上で農地において営農型太陽光発電の中でどのように適用していくかという順序での議論をすべきという点は、強調しておきたいと思います。

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