家庭で利用されるエネルギー機器のさらなる効率運用に向けて、デマンドレスポンスの活用を目的に導入される「DR ready制度」。国はまずエネルギー使用量の大きいヒートポンプ給湯機を対象に、機器のDR ready要件を整備する方針だ。
改正省エネ法では、「電気の需要の最適化(デマンドレスポンス)」が法の目的に追加されたように、電力の安定供給確保のためには発電側リソースだけでなく、需要側リソースを活用することが重要である。特に、太陽光発電の導入が著しい日本では、その出力制御抑制のためにも昼間帯での「上げDR」の拡大が求められている。
省エネ法の対象となる大規模事業者(特高・高圧)に対しては、DR実績の定期報告が義務化されるなど直接的な措置が導入されたが、家庭や小規模事業者(低圧)に対しては間接的な措置とならざるを得ない。
省エネ法ではこれまで、エネルギー消費機器等を対象とした「トップランナー制度」を運用してきたが、国はこれに類似した仕組みとして、機器の「DR ready制度」を導入することとした。家庭においてエネルギー消費量が大きく、普及台数の多い機器の代表例がヒートポンプ給湯機(エコキュート)であることから、資源エネルギー庁の「DR ready勉強会」では、まずはヒートポンプ給湯機を対象として、機器のDR ready要件の検討を進めてきた。
なお、米国のワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州では既にヒートポンプ給湯機のDR ready要件への準拠を義務化しており、英国と豪州は義務化を検討中である。
家庭用ヒートポンプ給湯器(以下、HP給湯器)の2022年度時点の導入台数(ストック)は747万台であり、2030年度の導入目標は1,590万台、2050年度導入見通しは3,651万台と推計されている。
近年、屋根置き太陽光発電を利用して、昼間に沸き上げる「おひさまエコキュート」が市場導入されているが、HP給湯器ストックの大半は夜間沸き上げを行っている。地域や気温等により異なるが、HP給湯器の1日消費電力量は3.8kWh程度であり、全国のHP給湯器の年間消費電力量は合計104億kWh程度(2022年度)と考えられる。
HP給湯器導入台数の50%が「上げDR」を実施すると仮定した場合、上げDRのポテンシャルは2022年度時点で52億kWh、2050年度時点で253億kWhと推計される。
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