予備率の算出に用いる各エリアの供給力は、発電事業者が提出した発電計画に基づいている。
通常、小売電気事業者は自社需要の予測に応じた需要調達計画を作成し、発電事業者はその需要計画に対応する発電販売計画を作成する(=供給力を提供する)が、小売事業者による想定需要と一般送配電事業者による想定需要に違いがある場合、予備力(予備率)に影響が生じることとなる。
そこで、広域機関事務局が東京エリア(4月1日〜8月31日)について分析したところ、小売事業者は需要を低めに、一送は需要を大きめに予測(計画作成)する傾向があることが明らかとなった。特に、週間・翌々日計画(供給力提供準備通知発信日)では、両者の需要想定の違いは大きく、小売事業者による需要想定は、翌々日計画時点でも予測精度が低い状態(需要計画が過少)となっている。
ただし、小売事業者の計画値同時同量の順守(インバランス回避)は、あくまで翌日計画もしくはそれ以降のゲートクローズ直前の需要計画で判断されるため、翌々日計画自体は問題とならない。
揚水発電はこれまでも、予備率が一定となるように各時間に貯水量(kWh)を配分することにより、供給力を算出してきた。2024年度以降、揚水発電は原則、発電BG(調整力提供者)が運用することに変更されたため、一送が使用可能な「余力」の範囲が小さい場合には、2023年度以前と比較して予備力も減少することとなった。
ただし、これもエリアにより状況が異なり、東京エリアでは平均約3%(最大8%程度)、エリア予備率が低下する影響があるのに対して、関西エリアでは影響が無いことが明らかとなった。これは、調整力提供各社の「余力」の範囲に関する考え方に違いがあることが理由と考えられるため、広域機関では、調整力提供者に対するヒアリングやアンケートを実施中である。
今後、中長期的な対策として、揚水事業者が定める余力範囲の考え方を整理するとともに、今冬に向けた短期的対策としては、調整力不足時における揚水の一時的なTSO運用に向け、その具体的な判断基準を検討する予定としている。
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