営農に支障がある事例とともに、毎年関心を集める栽培作物はどんな結果になったでしょうか。大方の予想通り「観賞用作物」が大幅に増加する結果となりました。令和3年度のデータから事例件数が999件増加する中で、「さかき、しきみ」が517件の増加で全体の52%を占めました。引き続き、これらの作物を選好する発電事業者が増え続けていることが分かります。
一方で、みょうがや山菜・どくだみ・レッドクローバー、しいたけ、きくらげなど営農型太陽光発電の普及当初から選択されてきた作物は比率を落としつつあります。絶対数は増え続けているものの、高遮光率の設備環境下で選ばれる作物が、徐々に「さかき、しきみ」へと絞られてきているのかも知れません。
最後に、10年以内の一時転用許可の要件を満たす事例のデータはどうでしょうか。許可件数全体に占める比率は48%で過去最大となり、令和4年度だけで見ても67%と急激に増加しています。比率としては担い手が引き続き最大ですが、農地の区分でも触れたとおり荒廃農地再生や第2種農地・第3種農地利用も前年度比から比率を大きく伸ばす結果となりました。やはり昨年も予想したとおり、FITの特定営農型太陽光発電などの制度的な影響がありそうです。
今年も営農型太陽光発電の最新統計を速報で解説しました。FITによる太陽光発電の導入が急激に縮小していく中で、営農型太陽光発電が着実な増加を続けていることは良い傾向だと言えるでしょう。しかし事業地域外の発電事業者が主体となる傾向や、栽培作物についても偏りが進んでいることも見逃せません。
来年の統計からはPPAモデルによる営農型太陽光発電も徐々に増加してくることが予想されますが、営農型太陽光発電を手掛ける事業者のプレスリリースなどを見ていると、事例は増加しつつも設備設置者・農地区分・作物などの傾向は同様の流れになるのではと思います。また、単収減少・生育不良の事例も着実に増えてしまっており、これについてはより詳細なデータを農林水産省としても収集・分析して、対処していく必要があるでしょう。
注目を集める垂直設置型の太陽光発電、ソーラーシェアリング視点で考える課題と提言
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営農型太陽光発電の関連制度が見直しへ、省令改正と新ガイドラインの内容とは?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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