以上のような、将来を想定したシミュレーションをより精度高く行うためには、電力系統の詳細な計測データを取得する必要があるほか、実際の運用においても、リアルタイムで系統監視を行う必要性が高まっている。
このような系統現象の計測環境整備の一つとして期待されているのが、「PMU」(Phasor Measurement Unit:同期フェーザ計測装置)の導入である。PMUとは、電力系統における各地点の電圧・電流・位相の計測情報を、GPSの時刻情報に同期して時系列の計測情報として常時計測する装置である。
PMUでは従来の計測装置(PQVF)では計測できていなかった位相を計測でき、常時、広域的に計測できることから、世界的に導入が進んでいる。PMUを用いてデータ精度を高めることにより、系統解析シミュレーションの精度が高まるほか、常時計測によって事故を未然に防ぐことが期待される。
これまで電力系統の慣性は、主に一般送配電事業者が容易に把握可能な火力発電所等の大型同期発電機から供給されるもののみを考慮してきたが、実際には、小規模電源や需要側から供給される慣性(潜在慣性)も存在している。NEDOの研究(図7)によれば、中西エリアにおいては、100GW・s程度の潜在慣性が存在すると推計されている。
先述の図3では、大型電源による慣性不足量を25GW・s・日と試算していたが、PMUを用いて潜在慣性をより正確に把握できるようになれば、慣性不足の対策費用を抑制することが可能になると考えられる。
また、PMUで電圧位相を計測することにより、中西6エリアの同期安定性低下に対する対策の高度化を図ることが可能となると期待される。
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