先述のとおり、再エネ(インバータ電源)連系量の増加により、短絡容量(系統電圧維持能力)が低下する。その環境下で、系統電圧の変動をきっかけに、あるインバータ機器の制御が周辺のインバータ機器の制御と相互干渉し、SSO(SubSynchronous Oscillation:商用周波数以下の動揺)という系統不安定現象を引き起こす可能性がある。
インバータ電源の増加により、近年世界各地でSSOの発生が報告されており、2019年に英国では、基幹送電線の事故(雷撃)に伴う下位系統の分散電源の停止後に、大型洋上風力や火力電源の連鎖脱落(約1900MW)が生じたことで周波数低下が生じ、負荷制限による大停電(約900MW)が発生した。
SSOを回避するためには、インバータ機器の制御モデルを把握してパラメータを適切に設定する(適切な事前評価を行う)ことや、系統の強さ(短絡容量の大きさ)を適切に保つことなどが効果的である。PMUで詳細な地点間の計測情報を比較検討することにより、インバータ機器がどのように相互干渉しているのかを事前に把握でき、効果的な対策を速やかに講じることが可能になる。
今後は再エネだけでなく、蓄電池やEV等のインバータ機器の増加、高圧直流送電(HVDC)の活用が進むと考えられており、電力安定供給維持のためには、系統運用技術の高度化を進めていくことが必要である。系統現象を高精度・リアルタイムに計測するためには、PMUの導入は非常に有意義であると考えられる。
このため広域機関では図9のようなPMU設置方針を作成し、一般送配電事業者各社は、まずは2030年代前半を目途に基幹系統(上位2電圧)の主要変電所など、必要性が高いと考えられる箇所にPMUの設置を進め、PMUの計測データを用いた電力系統の運用の高度化を進める予定としている。
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