欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)や日本のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)では、Scope3排出量の開示義務化を予定しており、東京証券取引所プライム市場に上場する時価総額3兆円以上の企業は、2027年3月期からScope3排出量の開示が必要となる。
また、Science Based Target Initiativeに基づくSBT認定を取得した企業はScope3の削減目標を設定する必要があり、認定企業の中にはその目標の一環として、サプライヤーの一定割合がSBT目標を設定することを掲げる企業も複数存在する。
このため、大手企業では取引先に対してGHG排出量の算定・削減等を求める動きが進みつつあり、日本商工会議所・東京商工会議所による調査では(図3左)、取引先からGHG排出量の算定・削減等の要請を受けている中小企業は約2割に上る。
ただし、図3右グラフのように、マンパワー・ノウハウ不足や資金不足等により、脱炭素に取り組みむハードルが高いと感じている中小企業も多く存在する。
このため環境省ではこれまでも、バリューチェーン全体の脱炭素化に向けての「サプライヤーエンゲージメント事例集」や、「バリューチェーン全体の脱炭素化に向けたエンゲージメント実践ガイド」を作成・公表している。また、環境省が運営する「Green Value Chain 促進ネットワーク」では、バリューチェーン全体での脱炭素経営促進に向けて、中小規模事業者を支援する金融機関や、GHG排出量算定・診断・第三者認証等ソリューションを提供する専門機関等のネットワークによる支援体制を構築している。
なお、国は2026年度より排出量取引制度(GX-ETS)を本格稼働させる予定としているが、本制度ではCO2の直接排出量10万トン以上の大規模な事業者を対象としている。このため、GX-ETS対象外の事業者に対しては、支援策とも連動させながら、GXリーグにおいて、Scope3(特に上流)の目標設定や実績の開示等を求め、脱炭素性の高い原材料調達等を推進することとしている。
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