AI普及に伴うデータセンターの急増に対応 系統運用容量の増加策第3回「ワット・ビット連携官民懇談会WG」(3/4 ページ)

» 2025年06月06日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

「N-1電制」による運用容量の拡大

 多くの系統において、送電線1回線事故等のN-1故障においても電力の供給を継続できるよう、2回線の設備が形成されており、各系統では設備容量の2分の1の運用容量が設定されている(図6)。

 発電側ではすでに、送変電設備のN-1故障時に瞬時に発電を制限(電制)する仕組み「N-1電制」を導入しており、従来はN-1故障時のために確保していた緊急時容量を平常時にも活用し、送変電設備の運用容量を拡大する対策が取られている。

 東電PGでは、需要方向の運用容量拡大策として、N-1電制の適用を提案しており、図6では「空き容量③」として表現している。

図6.N-1故障を想定した設備形成と運用容量 出典:東電PG

 需要側でN-1電制を適用することにより、平常時には2回線とも最大容量(100MW×2)を使用することにより、新たなDC(100MW)の接続が可能となる(図7)。このDCは負荷遮断装置の設置が必要となり、N-1事故時には瞬時に系統から遮断される。また、工事・点検等に伴う送電線の作業停止時にも、受電制限が生じることとなる。

 N-1電制では蓄電池は不要であるため、導入コストは比較的小さく、運用容量拡大ポテンシャルは大きな対策であると言える。ただし、負荷遮断により生じる損害は賠償されないことに留意が必要である。

図7.需要側N-1電制の適用イメージ 出典:東電PG

分散型小規模DCによる対策

 DCは近年著しい大規模化が進んでおり、東電PGへの接続検討案件は平均130MW程度となっているが、特定地域への一極集中は、電力インフラ・通信インフラの両面から、大規模災害へのレジリエンスや安全保障の観点から課題があると考えられる。このため、電力インフラに比べ、整備に時間とコストが掛からない通信インフラを活用する分散型DCの検討も進んでいる。

 APN(All-Photonic Network)は、光技術を使ってデータを超高速・超低遅延・大容量で送る通信ネットワークであり、これにより、離れた場所のDCを一つのコンピュータのように活用するなど、計算資源の分散化が可能になると期待されている。

 電力系統の観点では、接続容量が2MW未満(高圧接続)の小規模DCであれば、配電用変電所の残容量に、低コストで短期間に接続可能と考えられる。東電PGでは、配電用変電所1箇所に2MWのDCを2件接続すると仮定した場合、東京エリア東側の栃木、茨城、千葉には、100〜150万kW程度の系統余力があると報告している。

図8.接続容量・受電電圧による工事負担金・工期イメージ 出典:東電PG

 なお長期的には、既存の系統設備の最大限の活用だけでなく、500/154kV変電所を2〜3カ所新設することも視野に、600〜900万kWのDC等の需要の受入れについても検討を行っている。

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