次世代型地熱発電を2050年までに7.7GWを導入──官民協議会が中間取りまとめ案第3回「次世代型地熱推進官民協議会」(3/4 ページ)

» 2025年10月03日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

「ESG」の2030年に向けたロードマップ案

 「ESG(Enhanced Geothermal Systems)」とは、岩石を水圧で破砕することで地熱貯留層を人工造成し、水を圧入し蒸気生産させて発電に利用する技術であり、熱水・蒸気がない地域での資源開発が可能となる。シェールオイル/ガスの開発が一般的な米国では、すでに商用化レベルまで開発が進んでいるが、日本の地層に適した技術の開発が必要とされている。

 「ESG」の2030年ロードマップ案においては、2030年までに、実証井掘削及びフラッキングによる貯留層造成、それによる熱回収システムの完成を目指し、生産試験井1組(生産井・還元井1坑ずつ)の完成を目標としている。2030年以降は、そのスケールアップにより、全国で2〜5万kW規模の発電所の建設を目指す、としている。

図5.「ESG」の2030年に向けたロードマップ案 出典:次世代型地熱推進官民協議会

2050年における次世代型地熱の導入発電容量の見通し

 以上のような主な次世代型地熱の2030年までのロードマップを踏まえ、官民協議会では、2050年までの長期的な次世代型地熱の導入発電容量の見通しを作成した。

 次世代型地熱の実用化に向けた投資促進や革新的な技術開発を通じたコスト低減等の事業性向上を図り、次世代型地熱ポテンシャル(77GW)のうち経済性に優れる上位10%に相当する約7.7GWを2050年までに導入を目指すこととした。また、事業環境が整っているなど早期の運転開始が見込まれる地域に対して導入促進に向けた支援等を行い、2040年までに約1.4GWの開発を目指す。

図6.次世代型地熱の導入発電容量の見通し(単位:GW) 出典:次世代型地熱推進官民協議会

 従来型地熱技術の内訳は、図7のように超臨界地熱とESG・クローズドループに大別し、1地域当たりの発電容量は、超臨界地熱では約20万kW、ESG・クローズドループでは約2万〜5万kWと仮定し、それぞれに開発地域数を乗じて、合計容量を試算したものである。

図7.次世代型地熱の導入発電容量の試算 出典:次世代型地熱推進官民協議会

 ここで留意すべきは、次世代型地熱の新規開発ペース・総開発件数である。現時点、従来型地熱において設備容量が1万kW以上の国内発電所は、15件・合計46万kWに限られる。また、従来型地熱の資源量調査補助事業件数は過去5年間で94件、JOGMECによる先導的資源量調査は延べ82件である。

 図7のように、例えば2041年以降のESG・クローズドループでは、導入に至るものが年間約5〜10地域という非常に速いペースで開発を進めるためには、その数倍の調査・開発行為が必要になると考えられる。このスピーディかつ大規模な実務を担う人材の確保・育成や、開発効率化のための技術開発が求められる。

 官民協議会では、次世代型地熱の実現に向けた長期ロードマップ(案)も作成し、フェーズ1として2030年までに国内で先行導入、フェーズ2として2030年代早期の次世代型地熱の運転開始、フェーズ3として国内普及とそれによる地熱発電の抜本的な導入量拡大を目指す、としている。

図8.次世代型地熱の実現に向けた長期ロードマップ 出典:次世代型地熱推進官民協議会

 次世代型地熱発電の導入拡大に向けては、技術開発だけでなく、地域住民との共生や、ファイナンス面での環境整備、地熱価値創造の仕組み等、官民一体で対応することが重要である。

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