広域予備率の現状と対策──小売事業者に電力調達の「過不足率」を通知へ第113回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」(3/4 ページ)

» 2025年12月03日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

新たなシグナルの必要性

 「広域予備率」というシグナルは、発電事業者や小売事業者等のさまざまな事業者に対して、適正な供給力の供出・調達を促すことを目的としている。

 ところが先述の図2で示したように、広域予備率が低下する原因・起因者はさまざまなタイプがあるにも関わらず、広域予備率という一つのシグナルだけではその原因を把握することは困難であり、各主体がどのような行動を取るべきか分かりにくいことが課題とされている。

 また現在、インバランス料金を算定する「補正料金算定インデックス」は広域予備率と等しく、需給逼迫時にインバランス単価が上昇することが、小売電気事業者(小売BG)や発電事業者(発電BG)に不足インバランスを解消するインセンティブを与えている。

 しかしながら、広域予備率低下時に追加供給力対策が実施され、広域予備率が上昇する(インバランス単価は低いままである)ことがあらかじめ分かっていれば、BGのフリーライド的な行動を招き、モラルハザードを引き起こすことも懸念される。

図7.広域予備率とインバランス単価の関係 出典:調整力需給バランス評価等委員会

 これまでの調査から、小売事業者による供給力調達不足が広域予備率低下の大きな要因となっていることが分かっており、特に小売事業者に対する新たなシグナルの必要性が高いと考えられる。

図8.各主体に対するシグナルの目的と課題 出典:調整力需給バランス評価等委員会

小売事業者に対する新たなシグナル「過不足率」

 本来、小売電気事業者は気象情報等に基づき適切に想定需要を見直し、それに対応する供給力を調達することが求められる。

 ただしこれまでの調査から、小売事業者による需要想定は一般送配電事業者(一送)による需要想定よりも平均的に精度が低いことが分かっており、仮に小売事業者が自らの想定需要と等しい供給力を調達したとしても、全体としては供給力不足となるおそれがある。

 相対的に精度の高い一送による需要想定を示すことは、小売事業者に自らの想定需要を見直す良いきっかけとなると考えられる。また一送は、自らの想定需要に基づいて追加供給力対策を実施することを踏まえると、一送の想定需要に対する小売事業者の調達の過不足の度合いを「過不足率」として示すことは、分かりやすいシグナルになるとみられる。

図9.小売事業者に対する新たなシグナル「過不足率」 出典:調整力需給バランス評価等委員会

 なお新たなシグナル「過不足率」は、個社単位で算定するものではなく、「小売事業者全体」の調達量と一送の想定需要の差分(過不足)を一送の想定需要で割ることにより算定するものである。

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