広域予備率の現状と対策──小売事業者に電力調達の「過不足率」を通知へ第113回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」(2/4 ページ)

» 2025年12月03日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

予備率算定方法の変更など「暫定対策」による効果

 2024年度は、需給調整市場の全商品が取引開始された年でもあったが、需給調整市場では当初、多くの商品で応札不足・約定不足が生じたため、余力活用契約による調整力確保が現在も行われている。

 週間商品の調達不足は、週間断面で計上すべき調整力の不足、つまり低い予備率として現れるが、その後の余力活用電源起動により調整力が確保され、高い予備率として現れることとなり、予備率が追加供給力対策の前後で大きく異なる一因となっていた。

 よって、翌日・当日計画時点では電源追加起動が確実であることを踏まえ、暫定対策として、週間計画・翌々日計画にもこの追加起動見込み量を計上することとした。

図4.予備率算定方法の変更(暫定対策) 出典:調整力需給バランス評価等委員会

 この暫定対策により、軽負荷期における週間計画の広域予備率が上昇するなど、一定の効果が確認されている。

揚水発電機の運用切り替えの実施状況

 2024年度から、平常時において揚水発電の池水位の運用主体は調整力提供者(BG)となっている。ただし、需給調整市場での調達および電源の追加起動を行っても調整力が不足する場合は、揚水発電を一時的に一般送配電事業者が主体的に運用すること(TSO運用)が可能と整理されている。

図5.揚水発電の予備率計上方法 出典:調整力需給バランス評価等委員会

 2024年度開始当初、追加供給力対策として揚水発電をTSO運用に切り替える判断基準は広域予備率「5%」であったため、「発動指令電源の発動」や「オーバーパワー運転」等が頻発したため、2024年度冬期以降、揚水TSO運用の判断基準を「8%」に変更した。

図6.暫定対応としての発動基準・順位の見直し 出典:広域機関を基に筆者作成

 これらの暫定対策実施後の2025年度(9月末まで)に、一送各社が実施した追加供給力対策の実施回数を見ると、揚水発電機の一時的な運用切り替え(BG運用→TSO運用)の実施が主であり、2024年度に頻発した発動指令電源の発動は東京エリアの1回に留まっている(ただし、10月に九州エリアで1回発動)。

表1.2025年度(9月末まで)追加供給力対策の発動実績 出典:調整力需給バランス評価等委員会

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR