大阪、節電・夏の陣――ここまで来た使った電力の「見える化」と「見せる化」導入事例(3/3 ページ)

» 2012年07月24日 07時50分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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 2011年のアンケート調査ではポータルサイトの利用状況と意識や行動の変化について尋ねた。

 まずアクセス頻度は、53%が「一度だけ見た」、9%が「一度も見ていない」だった。頻度が高い「月に一度程度」(29%)や「週一度程度」(9%)にとどまった。職員や教員に比べて学生のアクセス頻度が低い傾向にあることも分かった。

 2012年のアンケートではポータルサイトとデスクトップガジェットの効果などを調べている。使いやすさの点では「ガジェットの方が使いやすい」「どちらかと言えばガジェット」を合わせて74%。情報の取得のしやすさの点では79%がガジェット、どちらを使いたいかという点でも89%がガジェットを挙げ、プッシュ型の情報に軍配が上がった。

 節電意識を維持できるか(5段階評価)では「4」および「5」の回答がポータルサイトで6%、デスクトップガジェットで43%、デジタルサイネージで53%に上り、ここでもプッシュ型の情報が優位だった。

プッシュ型の情報配信。デジタルサイネージ(左)は待ち時間の合間に見てもらえるよう、エレベータの待ち合わせ場所やリフレッシュルームに設置。竹村研究室に在籍する学生が作成したデスクトップガジェット(左)。見える化した情報を知る手段として好評だ

 「東日本大震災のことを考慮しても、節電に対する意識は変わったようです。プッシュ型の情報提供が有効であることも分かりました。しかし、行動にまで移せるようになった人は少ない状況でした」と間下氏。今後のプロセス(「意識・行動パターン分析」や「削減アクション」)に向けては、「もっと多くのデータを蓄積する必要があると考えています。情報提供についても、もっと良い方法を検討していきたい」と話している。

 なお、阪大ではCMCグリーンITプロジェクトをきっかけに、全学規模で電力消費を“見える化”する取り組みを2011年4月に始めた。こちらは大学の環境エネルギー管理部が中心となり、キャンパス内の施設ごとに使用電力を計測。CMCと連携して、例えば学部間での使用電力の違いやキャンパス間での違いなどの情報を学内ポータルで公開している。

 竹村教授によれば、CMCグリーンITプロジェクトのような研究は東京大学や京都大学、静岡大学、海外ではカリフォルニア大学サンディエゴ校などでも実施されており、電力消費の削減に向けた研究は世界規模で広がりつつあるという。

ポータルサイトとデスクトップガジェットに関する2012年のアンケート結果

企業での“見える化”活動

 節電への取り組みは企業にも求められている。CMCグリーンITプロジェクトに参加する日本マイクロソフトでも震災以前から節電を進めてきたといい、2011年に移転した東京・品川の本社オフィスでは阪大で構築したのとほぼ同様のシステムで、使用電力の可視化と節電への取り組みを行っている

 企業向けには数多くの電力可視化ソリューションがITベンダーなどから提供されているが、気になるのは投資対効果の点。企業にとって節電は社会的責任という観点もあるが、電力コストの削減という直接的な効果も無視できない。

 マイクロソフト側でCMCグリーンITプロジェクトを担当するエンタープライズマーケティング本部 第三グループ 担当部長の熊野和久氏によれば、オフィスのフロア単位で使用電力を可視化する最小構成のシステムなら、投資コストは200〜300万円ほど。「企業は大学に比べて全社一律の節電アクションが取りやすいので、電力の削減効果は平均でも2〜3割になります。年間に支払う電気料金が多い企業なら、1年以内に投資コストを回収できるでしょう」(熊野氏)

 マイクロソフトはIT機器の節電を支援するソフトウェアを無償提供している。計測センサーなどを別途購入する必要はあるものの、電力の“見える化”に必要な投資コストを抑えられるようにすることで、節電を支援したいという。

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